ヘルニア手術の選び方
椎間板ヘルニアになったからと言って必ずしも手術が必要というわけではありません。当院に治療の相談に来られた方であっても、症状が出始めて間もない方には、医学的に緊急性を要すると判断されるものを除いて、原則そのようにするようにしていますが、初期治療の基本はやはり投薬や神経ブロックなどを併用した保存的治療です。 これは椎間板ヘルニアの症状はそうした治療を継続することによって2~3か月以内にほとんどの人で軽減・消退するという医学的な事実があるからです。もちろん、あまりにも症状がつらい状態で続き、睡眠もままならないなどのようなことがあれば相対的には治療の適応となることもあります。
またもう一つ覚えておいてほしいことは
“椎間板ヘルニアによる症状の軽重は必ずしも病状の軽重とは関連しない”
ということです。
「こんなにつらいからきっとヘルニアも大きくてひどいんだろう」
と多くの方がお考えだと思いますが、実際には必ずしもそうではありません。比較的小さな椎間板ヘルニアであってもその場所や向きが良くなければ非常につらい症状になることがありますし、脊髄神経の通り道がほとんどふさがる程大きな椎間板ヘルニアであっても圧迫の仕方によっては少し足がしびれる程度で日常生活にはあまり問題なかったりというようなことがよくあります。
治療方法の判断は”症状の軽重で決めることができない”のです。
したがって椎間板ヘルニアの治療はその状態によって治療方法を選択しなければなりません。実際には椎間板ヘルニア単独での症状ではないことが多いというのが現状で神経を取り囲む、骨、関節軟骨、靭帯などによっても椎間板ヘルニアの症状は影響を受けますのでこれらの考慮も必要となります。その判断はやはり治療を担当する専門医に委ねる他はありません。
そうした中で手術の方法は大きく分けて3通りのものがあります。
①経皮的手術 ②内視鏡的手術 ③顕微鏡的手術
これらの治療の選択は先にお話したとおり、椎間板ヘルニアの状態によって判断されます。それぞれの特徴は以下のようです。
経皮的手術
- もっとも侵襲が少ない。
- 局所麻酔での治療が可能。
- 椎間板構造が大きく壊れていない中等度までの椎間板ヘルニアに有効性が高い。
- 一度に複数の椎間板の治療が可能。
- 日帰りで行うことができる。
内視鏡的手術
- 顕微鏡的手術より侵襲が少ない。1cm未満の切開創で治療可能。
- 原則的に全身麻酔で行う。
- おおよそどのような椎間板ヘルニアに対しても対応できうるが、両側にまたがるようなものや複数の椎間板の治療は侵襲の程度が強くなりあまり向かない。
- 数日の入院を要するのが通常。
顕微鏡的手術(一般的な切開手術)
- すべての手術の中でもっとも侵襲が大きい。
- 全身麻酔で行う。
- どのような椎間板にも対応できる。椎間板以外の構造異常に対しても同時に処置が可能。
- 最短で2週間弱の入院が必要。
椎間板ヘルニアの治療方法にも詳しく記載していますので、あわせてご覧ください。
このような治療方法の選択はやはり素人判断ではできません。 “・・・のような方法で治療を受けたい”と希望してもそれがかなわないのは、それが不適切な治療だと判断された時です。 そういった意味ではやはり専門医を受診し病状の正確な把握が何より重要となります。