【動画解説】「尊厳あるがん治療 CDC6RNAi」②

これからのがん治療 期待と課題(全6話中第2話)

2020年7月15日開催の院長のオンライン講演会から『尊厳あるがん治療 ②これからのがん治療 期待と課題』(全6話中第2話)の内容をご紹介します。進行末期がん、難治性のがんに対する新しい治療として、がんゲノム医療(精密医療 precision medicine)、免疫チェックポイント阻害剤による治療、CAR-T細胞療法、光免疫療法、がんワクチン、ウイルス療法などが期待されるものですが、治療効果の限界や副作用、そして高額な薬価などの課題があります。期待されるこれからの医療のさらに先を見すえた治療技術「RNA干渉」に基づく「遺伝子治療/CDC6 RNAi治療」を当院では既に提供しています。

【動画情報】

テーマ:「尊厳あるがん治療」②これからのがん治療 期待と課題(全6話中第2話)
時間:11分34秒(第2話)
公開日:2020年7月15日
講演者:北青山D.CLINIC  院長 阿保義久(医師)


【このテーマの動画(全6話)】

第1話 ①日本のがんの現状
第2話 ②これからのがん治療 期待と課題(このページ)
第3話 ③遺伝子治療とは
第4話 ④尊厳あるがん治療・CDC6 RNAi 治療
相5話 ⑤CDC6 RNAi 治療経過
第6話 ⑥CDC6 RNAi 治療実績・展望

【全文】

はじめに


2つ目のカテゴリーは、今お話した末期治療に対しての課題がある中でこれからのがん治療、どのように日本のがん治療を進められるかということに関してお話させて頂きたいと思います。

進行・再発がん患者さんたちへの対策


まず1つ目は、進行再発がんの患者さんたちへの対策としては、precision medicine という精密医療と呼ばれるようなゲノム医療が今非常に注目されています。これはがんの組織の中から100個ぐらいの遺伝子を解析して、その遺伝子変化に応じた個別の治療を行うという設計のもとになされている治療です。そういう意味で精密な医療という位置づけになります。


がんゲノム医療の限界・課題


ただ、限界と課題もあります。まずは解析するために組織を取らなければいけないので、組織がない場合は検査ができません。ですから手術ができなかったり、そもそもが、がんに対してアプローチできないような難治性のがんの場合には、その解析ができないという根本的な問題もあります。あとは、結果としてせっかく調べたのに、キーとなる遺伝情報が得られなかった。そういう可能性も少なくない。まだそういう状況です。すなわちターゲットとなる遺伝子が同定できない可能性が、まだまだ技術的な限界としてあります。さらに遺伝子の変化をせっかく読み取れたのに、今度はそれに対する反応薬がない。まだ薬が開発されていない。そういうミスマッチが起きるということもあります。幸運にも遺伝子変異が分かって、それに対する効果が期待できる薬の選択ができたとしても、それはまだ少数派ではあるんですけれども、それが実現されたとしても、その薬の副作用の問題が解消されたわけではない。そういう、まだまだ改革しなければいけないところはあります。


免疫療法の革命的進歩 その1


これはノーベル賞を受賞した本庶先生の発見された治療法で、免疫チェックポイント阻害剤の治療というのが、その2つ目の治療として挙げられます。今までの免疫治療というのは、単に免疫細胞の数を増やしたりしてがんに攻撃するという考え方をしていたんですけれども、がんは、やはり巧みな性質を持っていて、免疫の細胞をだますというところがあったんですね。その免疫細胞のスイッチを切って、自分たちへ攻撃させないようにするという性質があることを、本庶先生は発見して、そのスイッチを切れば、免疫細胞が自在にがん細胞を攻撃できるということを発見されました。そのスイッチを切る治療が免疫チェックポイント阻害剤です。


免疫チェックポイント阻害


本来であれば免疫細胞はがんにアタックできるところ、がん細胞というのが、この免疫細胞の攻撃するスイッチをちょっと押して、それを切ってしまうことができる。こういう性質が分かった。なので、このスイッチが押されないように、免疫細胞側のスイッチの受容体を切るか、もしくは、がんがそのスイッチを押すところをブロックするか、このいずれかを阻害することで、容易に免疫細胞ががんにアタックすることができるようにする治療法です。


免疫チェックポイント阻害剤の課題


ところがこの免疫チェックポイント阻害剤は、非常に注目されているんですけれども、本当にその治療選択がまず正しいのかという点ですとか、実際これも行っても効果が見られるのが1~2割であったりとか、効果があっても実際残念ながら数ヶ月ぐらいしか延命効果が得られない。免疫チェックポイントを阻害したがために、本来、正常な細胞の免疫チェックポイントも阻害されてしまって、予期せぬ免疫関連疾患、自己免疫性疾患などが誘発される可能性があったり、そういうまだまだこれも課題があります。あとは非常に治療費が高額だということも、よく取り上げられる点だと思います。


免疫療法の革命的進歩 その2


3つ目の治療としては、遺伝子改編の細胞療法でCAR-T 細胞療法というのがあります。これは遺伝子治療の技術と、免疫療法の技術を合わせた治療方法で、簡単に言いますとT細胞という免疫細胞を遺伝子操作によって強力にして、非常に強いサイボーグのようなT細胞免疫細胞にしてがん細胞を叩くという考え方の治療です。


CAR-T 細胞療法


これを図示すると例えばこのようになります。まず患者さんから免疫細胞であるT細胞というのを抽出します。患者さんから抽出して、それを増やして、その中に遺伝子操作をすることによってT細胞を強力にします。強力にしたT細胞、しかも数が大量に増えたものを患者さんもまた体の中に戻す。そういう治療法です。


CAR-T 細胞療法の課題


これは実際にもう、白血病には劇的に効果を上げています。それによって白血病は、治せなかったものが治せるような症例も確認されるようになってきました。ところがまだ胃がんや肺がん、大腸がんなどの固まったがん、いわゆる俗に言う固形がんの治療効果というのは、まだまだ未知数というか、残念ながら良好な結果が得られていない状態です。 あとは比較的高い確率で、サイトカイン放出シンドローム、これは今コロナ感染症が注目されていて、新型コロナに対して免疫が暴走してサイトカイン放出症候群を作ることが重症化もしくは致死的な症状の原因といわれているんですけれども、まさにこのCART-T細胞療法はそういうサイトカイン放出シンドロームを起こすリスクがある。ですからこれによって重篤な副作用や、場合によっては命に関わることもあるということも注意されております。あとは神経毒性、神経に対するダメージがあったりとか、免疫チェックポイント阻害剤と同じように治療費は極めて高額であるとか、その辺が課題です。


CAR-T 細胞療法 保険収載


この治療はもう日本では昨年ノバルティスのキムリアという薬が保険収載されていて、米国の薬価ほど高額ではなかったんですけれども、それでも日本の薬価は3300万円という非常に高額な薬価になりました。この辺の薬価を規定するのは、どれだけ製薬メーカーがこの薬を開発するのに資源投入したかということが一つの判断材料として薬価を決められるので、このような遺伝子製剤というのは今後この薬価をどのようにコントロールしていくかというところも一つの課題と言えると思います。


CAR-T 細胞療法 適用・課題


これも今お話したことを繰り返してまとめさせていただいているんですが、ちょっとここは時間の都合上端折らせていただきたいと思います。こういう、いろいろな白血病に対する治療が遺伝子治療として行うようになってきたんだけれども、その今の高額な薬価の問題から社会保障を行う上でどのような制度を構築していけばいいのかということが課題になっています。


光免疫療法


4つ目の新しい治療として光免疫療法、これは NIHという米国の研究機関に所属している京都大学出身の小林先生が開発されたもので、この治療の一番の画期的なところは、光を使うという点とその治療に伴う副作用が極めて少ないという点なんですね。抗体を利用して、その抗体に光に反応する物質を付着させてがんに集積させます。その部分に光を照射するとがんに穴が開いて破裂するかのように無くなる。ちょっとSFの様な治療設計になっているんですが、これは副作用が極めて少ないというところが期待されるところです。


光免疫療法 図解


がん細胞にくっつく抗体を、体の中に注射して、それがんに集まります。その抗体には光刺激を吸収するような物質もくっつけているので、その部分に光近赤外線を照射するとそのがんは壊れてこなごなになってしまう最終的にそれを免疫細胞が、食いつぶしてがんを消すという画期的な治療です。


光免疫療法の治験経過


もうこの治療に関しては治験が進んでいます。米国では2相試験、日本でも1相試験、国際的には3相試験、いわゆる1相2相3相というのは薬を開発するうえでどうしても必要な治験なんですけれども、第1相試験というのはまず安全性の確保という初期試験です。2相試験というのは、少数の患者さんに対して効果があるかどうかというのを調べる。3相というのは大人数、大規模な患者さんに対しての検査試験ということになります。この3つの段階を経て安全性や治療効果が確認されると、一般の方々が自在に使えるという承認薬として世に出ていくことができるんですね。光免疫療法は今お話したように、米国では第2相、日本でも1相試験がもうほぼ終わって安全性は確認されています。国際的にも第3相試験を今着手しているというところです。


がんワクチン


さらにその後期待できる治療として、こういうがんワクチンですとか、ウイルス療法というのがあります。これらも同じように治験が進んでいます。がんワクチンというのは、がんに対しての免疫を高める、いわゆるインフルエンザウイルスワクチンとか、今期待されている新型コロナに対するワクチンと同じような考え方です。がんはウイルスではないんですけれども、免疫が反応するという点では似たような対象物と言えるので、それに対するワクチンを体の中に作らせることができないかという発想で、開発されている治療薬です。皮膚がん、食道がん、肺がん、膀胱がん、膠芽腫という神経系の疾患の悪性新生物に対しての治験が進められています。


ウイルス療法


最後に比較的最近取り組まれているものとして、このウイルス療法というのがあります。ウイルスっていうのは基本的には病変なんですけど、このウィルスの特別な性質細胞の中ににしっかりと侵入していくことができるという性質を逆に利用して、ヘルペスなどのそれほど質の悪くないウイルスを基に生成して病原性を取り除いて、悪性腫瘍だけにそのウイルスが感染して腫瘍を溶解するような性質を付与することでウイルスによってがんを叩く、そういう新しい発想の治療です。これも治験が今もうこのように、1相2相という形で進んでいます。日本は膵臓がんや食道がん、悪性神経膠腫に対して、1相2相試験を行っていて、米国も一般的な固形がん固まったがんに対しての治験を行っています。


新しいがん治療の台頭


このように最初にお話しした進行末期がん、なかなか治療根治ができないようながんに対しての新しい治療、この取り組みはたくさん出てきています。これらの治療を俯瞰した上で、我々北青山Dクリニックも次のさらなる先端医療としてRNA干渉による遺伝子治療を、今もうすでに提供しています。この後その辺のお話に触れていければと思っています。これで2つ目のカテゴリーは終わりになります。