下肢静脈瘤の血管内焼灼術治療

目次

血管内焼灼術とは

血管内焼灼術とは、径1㎜前後の細いレーザーファイバーや高周波(ラジオ波)カテーテルを弁不全を来した逆流血管に挿入して病的な部分を閉塞する血管内治療です。

閉塞した静脈は徐々に萎縮し最終的には繊維化して体内に吸収されるように消失します。この治療法は心臓や脳血管の血管内治療と同様の医療機器を用いて実施されます。

血管内治療の一覧

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血管内焼灼術の歴史

ミミズばれのように血管が大きく膨らんだ静脈瘤(伏在型静脈瘤)に対しては、従来ストリッピング手術が適用でしたが、この治療は下半身麻酔や全身麻酔などが必要で入院が余儀なくされるものでした。私たちは、1998年に、手術技術と麻酔を工夫して日帰りで実施できるストリッピング手術を考案しましたが、皮膚に2か所以上の切開が必要な点で治療直後の入浴は制限されました。

21世紀になって、ファイバー状のレーザーや高周波(ラジオ波)を用いた血管内治療がストリッピング手術に代わる低侵襲治療として台頭してきました。これらは、皮膚に切開を入れる必要がなく、局所麻酔や静脈麻酔などの小麻酔で対応できるため、日帰りはおろか外来(手術時間15~30分程度)で実施できる低侵襲治療として広く普及しています。

初期のレーザーや高周波は治療後の再発率が比較的大きく、治療適用となる静脈瘤に制限がありましたが、2005年以降に登場した波長の長い(1320~2000nm)レーザーやより高熱で(120℃)焼灼ができる高周波が開発され治療成績が飛躍的に改善しました。長期治療成績においても、レーザーや高周波により血管内焼灼術は、従来の治療法であるストリッピング手術よりも成績が優れていることが最近では示されるようになりました。

当初は、血管内レーザー治療、血管内高周波治療と呼ばれていましたが、ある医療機器メーカーが商標登録したためにこれらの言葉は使いにくくなり、一般的にはそれぞれ、血管内レーザー焼灼術、血管内高周波焼灼術と呼ばれています。これらは、今やストリッピング手術に代わって、伏在型下肢静脈瘤の根治的治療法として国際的にゴールドスタンダードです。

また、2013年頃から欧米ではレーザーや高周波に代わる血管内治療の方法が考案されています。それは、医療用の瞬間接着剤シアノアクリレートにより血管を閉塞させるものでスーパーグルー治療(venoclose)と呼ばれています。

上記の血管内治療の中で、血管内レーザー焼灼術は下肢静脈瘤レーザー治療のページで、スーパーグルー治療も専用ページで詳説していますので、ここでは血管内高周波焼灼術を主として説明します。

血管内高周波焼灼術とは

血管内高周波焼灼術(RFA:Radio Frequency Ablation)は、血管内レーザー焼灼術と同様に伏在型の下肢静脈瘤の低侵襲治療(体に負担の小さな回復の早い治療)の一つです。

高周波とは一般的な定義では10kHz以上の電磁波のことを言います。医療分野では周波数の高い交流電流のことを指します。高周波電流は人体に対する刺激が少なく安全性が大きいので医療分野では様々な形で応用されています。例えば、電気メスやがん治療で用いられるラジオ波焼灼術が代表的です。下肢静脈瘤に対する高周波治療はファイバー先端のラディエーターで高周波(ラジオ波)により作られた高熱により血管壁を熱凝固させることにより血管内腔を閉塞させます。

レーザーはファイバーの先端からレーザービームが照射されますが、高周波はファイバー先端の7㎝長のヒーティングコイルエレメントから一様に高熱が発生されて血管が処理されます。波長1470nmのレーザーと同様に2014年に日本でも保険収載されています。1470nmのレーザーよりも手術時間が短いのが特徴ですが、照射部位が短い血管や極端に蛇行が強い静脈の処理には向きません。

血管内高周波焼灼術(RFA:Radio Frequency Ablation)

ファイバー先端に7㎝長のコイルエレメントがあり、高周波電流で120℃に加熱されます。この熱が血管壁に伝導されて内腔が閉塞します。

レーザー焼灼術と治療における手技はほぼ同等です。局所麻酔と静脈麻酔を用いて、治療対象血管に針による穿刺で挿入したカテーテルを介して高周波ファイバーで処理します。治療後の経過もレーザーとほとんど変わりません。

ヒーティングコイルエレメント

レーザーと比較して メリット&デメリット

メリット

  • 保険適用の1470nmのレーザーに比べて照射時間が短い。
    (1470nmレーザー 3~7分  高周波 2~3分)

デメリット

  • 照射部位が短い血管の焼灼ができない。
  • 極端に蛇行が強い静脈の治療に適さない。
  • 拡張径が大きい静脈(例:20㎜以上)の治療効果が不確実。

当院の高周波治療の特徴

静脈瘤の性状に応じて1470nmレーザーと高周波を使い分けて対応できるので、あらゆる静脈瘤に対しても保険適用の治療で対応できます。高周波ファイバーはシングルユース(再利用はしない 1回の治療で破棄)なので治療による水平感染のリスクがありません。

参照元

監修医師

 監修医師  北青山D.CLINIC院長 
阿保 義久 (あぼ よしひさ)
経歴
所属学会