ストリッピング手術

目次

ストリッピング手術とは

典型的な下肢静脈瘤である大伏在静脈及び小伏在静脈領域の静脈瘤に対する標準治療として、19世紀から長い間ストリッピング手術が行われています。「ストリッピング」とは「抜去する」という意味で、その手術においては、弁が壊れて逆流をきたした病的な静脈を文字通り抜去(切除)して取り除きます。

ストリッピング:病的な血管の中にストリッパーという特殊な器具を挿入して血管を固定し抜去する手術

病的な血管を除去するという点では確実かつ迅速な治療法ですが、手術を行うためには全身麻酔や腰椎麻酔が元来必要で1~2週間の入院が余儀なくされました。脚の付け根や膝の裏から足首にかけての静脈を広範囲に切除するためにしっかりと麻酔をかける必要があり、手術後に回復して日常生活に戻るのに時間を要しました。

昨今は切除範囲が最低限に抑えられるようになったため、入院期間は短縮されるようになりました(数日~1週間)。ただし、最低2か所以上の傷口ができる、引き抜く血管周囲の神経が傷つく(痛みやしびれが残存する)、術後の出血が多い、など体への負担は避けられません。Dクリニックでのストリッピング手術では経験したことがありませんが、他院で受けたストリッピング手術後に痛みが術前より悪化して治療を受けた事を後悔していると話す患者さんはしばしばお見受けします。また、ストリッピング手術の際には、抜去する血管周囲の組織を剥離しなければならず、その部分が修復する際に新たな血管が病的に再生されることがあります。そのため静脈瘤が複雑な形で再発を来すこともあります。

手術で剥離した部位(→)から血管新生により再発をきたした例

そのようなことから、ストリッピング手術ではなく体に負担の少ない血管内治療が下肢静脈瘤の標準手術として国際的に盛んに行われるようになっています。そして、血管内治療自体も進化し続けており、レーザーや高周波の他にスーパーグルー(瞬間接着剤)を用いた熱刺激のない、より負担の小さい治療法も登場しています。

国内の学会では、大きな静脈瘤には血管内焼灼術ではなくストリッピング手術の方が良い、という発表が、今でも時々見受けられますが、術後十年程度経過した症例を比較すると、ストリッピング手術に比べて血管内焼灼術は、再発率が小さく患者さんの満足度も大きいということを確認しています(⇒第35回日本静脈学会で報告済)。

従来の手術的加療(ストリッピング)を好まれる先生方もおられることは事実ですが、今や、ストリッピング手術適用の患者さんは全て血管内焼灼術で対応できる時代になったと言えます。

下肢静脈瘤とは?を詳しく知りたい方はこちら

メリット&デメリット

メリット

  • 大きな静脈瘤でも確実に処理できる。
  • 静脈瘤を消去するという観点では最も迅速。

デメリット

  • 全身麻酔や腰椎麻酔など大きな麻酔を使うことが多い。その場合入院が必須となる。
  • 脚に3-5㎝程度の傷が複数発生する。
  • 術後の内出血が他の治療法に比べて多い。
  • 術後の神経障害が激しく残ることがある。
  • 術後の痛みが他の治療に比べると大きい。
  • 血管新生による再発を来しやすい。

当院のストリッピング手術の特徴

北青山Dクリニックでは、100年以上も前から行われていた入院下によるストリッピング手術を、日帰り手術として実施する手法を考案して1998年から日帰り(外来)ストリッピング手術を提供していました。2005年からより低侵襲治療である血管内レーザー治療に着手しており、2011年に血管内レーザー焼灼術が保険収載されてからは基本的にはストリッピング手術を行っていません。

  • 1998年に、ストリッピングを日帰りで実施する手法を発案。
    それ以来全例日帰り治療で実施している。
  • 局所麻酔、静脈麻酔で行っているので手術後すぐ歩行が可能。
  • 治療満足度が大きい。

現在、血管内レーザー焼灼術、血管内高周波焼灼術、スーパーグルー治療など複数の低侵襲治療がラインアップされており、偶発症の頻度や程度が大きい従来のストリッピング手術は原則として行っていません。

参照元

監修医師

 監修医師  北青山D.CLINIC院長 
阿保 義久 (あぼ よしひさ)
経歴
所属学会