弾性ストッキングでの下肢静脈瘤の治療
概要
弾性ストッキング(弾力ストッキング)は、下肢静脈瘤の治療や予防法として基本となる圧迫療法に用いられる医療材料です。下肢を外側から適度に圧迫することにより、静脈の病的な拡張が抑えられ、その還流が促されて血液循環を改善させる効果があります。普通のストッキングと異なり圧迫力が相当に強いので、着用するのに多少骨が折れることがあります。弾性ストッキングの代わりに弾性力のある包帯を使用することもできますが、日常的に使用する場合には、包帯をいちいち足にまくのは現実的ではありません。
また、市販でもさまざまな弾性ストッキングが販売されており、夜間就寝時にのみ使用して「美脚をつくる」ことをキャッチフレーズに販売されているものもあります。しかし、市販のストッキングは圧力が弱めです。また、弾性ストッキングは重力の影響による血液のうっ滞に対して改善効果を求めるものなので、夜間横になっている時に着用の必要はなく、立ちっぱなしや座りっぱなしの時間が多い日中に使用するのが適しています。
医療用弾性ストッキング
医療用に用いられる弾性ストッキングは、特に足関節部の圧迫圧が強く、脚の付け根に向かうほど圧力が弱くなる段階的な圧力構造を有しています。これにより足先から頭の方へ向かう静脈の流れをサポートすることができます。市販のストッキングも同様の工夫が施せているものが多いですが、医療用のストッキングは治療の補助に用いられることが多く、医師の指示の下で使用することになり、全体的に圧力が大きめです。下肢静脈瘤の治療に用いられる場合は、最大の圧迫圧は30-40mmHgものが選択されます(市販の一般的に使用されるものは10-15mmHg)。弾性ストッキング着用は、静脈のうっ滞改善に非常に有益ですが、これを使用することで下肢静脈瘤が治るわけではありません。下肢静脈瘤の症状の緩和や、悪化を抑える効果が期待されます。また、下肢静脈瘤の根治的治療である血管内焼灼術や硬化療法などの補助療法、補完治療として弾性ストッキングによる圧迫療法は非常に重要です。
当クリニックで採用している弾性ストッキング
医療用ストッキングの多くは欧米製のものですが、当クリニックでは日本人の体質や体型にあったオリジナルの国産のストッキングを使用しています。また、患者さん方の声に応える形で工夫を施し、以下の特徴を有しています。
- 下肢静脈瘤に対する治療を最前線で提供いる医療現場から生まれた
- 医療用の十分な圧迫力を持ちつつ、柔らかく履きやすい
- 消臭効果のある糸を使用しいつでも快適
- 糸をダブルコーティングしているため破れにくい
参照元
- Safety and Effectiveness of Endovenous Laser Ablation Combined With Ligation for Severe Saphenous Varicose Veins in Japanese Patients.
International Heart Journal Volume 57 (2016) Issue 1 - 下肢静脈瘤に対する血管内レーザー焼灼術 (特集 下肢静脈瘤の手術)
手術 = Operation 72(5), 723-735, 2018-04 金原出版