下肢静脈瘤の硬化療法
フォーム硬化療法とは
硬化療法は、硬化剤という血管壁を癒着させる特殊な薬液を注入して治療対象となる血管内腔を閉鎖する方法です。麻酔が不要なので外来で簡単に実施することができます。治療後は弾力ストッキングや包帯による圧迫が1~2週間程度必要ですが日常生活に特に制限はありません。
フォーム硬化療法の適用は、血管径の比較的小さな静脈瘤と言えますが、重症化し得る伏在型の静脈瘤にも応用されることがあります。しかし、伏在型の静脈瘤に対しては、レーザーや高周波による血管内焼灼術が十分に低侵襲(体への負担が小)で治療効果がより大きいので、フォーム硬化療法が使用されることは少ないと言えます。
フォーム硬化療法の良い適用は、側枝型の静脈瘤、陰部静脈瘤、網目状静脈瘤などです。伏在型の静脈瘤に対するレーザーないしは高周波の血管焼灼術やスーパーグルー治療の、補完治療として付加されることもしばしばあります。治療後、一時的に血管炎が発生したり、しばらく硬結(しこり)や色素沈着が残ることがありますが、適用をしっかりと選択すれば気軽に実施できて応用範囲の広い治療法です。
硬化療法の歴史
下肢静脈瘤の治療としての硬化療法の歴史は、その従来からの代表的標準治療であるストリッピング手術よりも古いと報告されています。
硬化療法に用いる硬化剤は、そもそも無水アルコールや高張ブドウ糖液が用いられていました。しかし、それらの硬化剤は治療中の痛みが強く血栓性血管炎などの副作用が激しかったため、一時期硬化療法は下火になりました。
1950年前後で安全な硬化剤が開発されて再び硬化療法が注目されるようになりました。20世紀後半には硬化剤と空気を混ぜてフォーム化させたものを用いる治療効果の大きい硬化療法(フォーム硬化療法)が発案され、この手法は急速に普及しています。現在は、従来の液状硬化療法が、このフォーム硬化療法にほぼ完全に取って代わられています。
メリット&デメリット
メリット
- 麻酔が不要
- 治療時間が短時間(5-10分)
デメリット
- 大きな静脈瘤には効果が弱い
- 複数回の治療が必要になることがある
- 治療後圧迫が必要
- 治療後、血管炎、しこり、色素沈着などが発生することがある
- また、それらの回復に時間がかかることがある
当院の硬化療法の特徴
硬化療法は、外来で簡単に行える手法で非常に応用範囲が広いですが、ほぼ必発の後遺症として色素沈着の回復に時間を要する(6か月~2、3年)ことが多いので適用をしっかりと見極めて実施しています。
フォーム硬化療法が応用できるようになってからは、さらに応用範囲が広くなり、従来であれば静脈切除などの外科手術で対応しなければ管理できない大きな静脈瘤もこの治療によりコントロールできるようになったため、当院では全ての静脈瘤の治療においてメスを全く使用せずに対応しています。
参照元
- Safety and Effectiveness of Endovenous Laser Ablation Combined With Ligation for Severe Saphenous Varicose Veins in Japanese Patients.
International Heart Journal Volume 57 (2016) Issue 1 - 病院トップ訪問(第106回)阿保義久 医療法人社団DAP理事長、北青山Dクリニック院長 小さいからこそ出来る日帰り手術と予防医療
集中 = MediCon. : medical confidential 11(3), 14-16, 2018-03 集中出版
監修医師
監修医師 | 北青山D.CLINIC院長 阿保 義久 (あぼ よしひさ) |
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経歴 |
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