下肢静脈瘤は深部静脈血栓症のリスクに関連する
研究背景
下肢静脈瘤は、肺塞栓症や末梢動脈病変の発症リスクを上昇させるとされているが、臨床的な意義は明らかにされていない。また、米国の約25%の方が下肢静脈瘤を有しているが、それらは比較的良性と考えられている。
研究方法
この後ろ向きコホート研究では、台湾の研究者達が、国際的に共有されているデータベースを用いて、212,000人の成人(平均年齢55歳 女性が69%)で下肢静脈瘤を有している人と同じ年齢・男女比の下肢静脈瘤を有していない212,000人の成人を比較して、下肢静脈瘤と他の血管疾患との関係について調査した。
結果
経過観察期間は7~8年で、下肢静脈瘤の患者さんで深部静脈血栓症を発症するのは年間1,000人当たり6.55人であったのに対して下肢静脈瘤のない方は1.23人であった。これは約5倍の開きがあることになる。また、肺塞栓症の発症率は下肢静脈瘤を有する人が0.48に対して有していない人は0.28、末梢動脈疾患についてはそれぞれ、10.73と6.22であった。
コメント
後ろ向き研究デザインは、完全に交絡変数がコントロールされたものとは言えないが、筆者たちの追加の研究により深部静脈血栓症に関して交絡は解消されている。下肢静脈瘤と末梢動脈疾患及び静脈血栓症の両方に関連があることは、炎症や血栓形成傾向がその発生に影響していることが示唆される。この結果は臨床上の示唆を即座に表すものではないが、下肢静脈瘤は深部静脈血栓症の発症リスクと判断すべきかどうかについて、本研究は課題を投げかけたことになる。
ジャーナル
The New England Journal of Medicine 1/Apr/2018