静脈瘤の臨床組織病理像とmatrix metalloproteinase-1、matrix metalloproteinase-9、matrix metalloproteinase-1の組織阻害酵素の静脈瘤形成における役割に関する研究
要旨
研究背景と目的
静脈瘤は、若年者から高齢者に至るまで見られる重要な疾患である。欧米諸国で行われた多くの研究で、matrix metalloproteinase (MMP)とMMPの組織阻害酵素が静脈瘤の発生機序に重要な役割を果たしていることが指摘されている。しかしながら、インド人を対象とした研究は限られている。本研究の目的は、静脈瘤の詳細な組織学的研究を行い、MMP-1とMMP-9、さらにMMP-1の組織阻害酵素(TIMP-1)の発現を観察するものである。
対象と方法
63例の静脈瘤と10例の正常の静脈を対象とし、前向き研究を行った。静脈瘤のパラフィン切片を作成し、ヘマトキシリンエオジン染色(HE染色)とマッソン・トリクローム染色、ベルホフ染色を行った。また、MMP-1、MMP-9とTIMP-1の抗体による静脈瘤の免疫染色も行った。細胞質におけるMMP-1、MMP-9、TIMP-1の発現は、強陽性(++)、弱陽性(+)、陰性(-)に分類した。
結果
HE染色やその他の特殊染色上では、部分的な血管内膜の肥厚(47.6%)、中膜の肥厚(73%)、弾性線維の断片化(84.1%)が、主な組織学的変化として見受けられた。また、MMP-1の発現は、58例(92.1%)の静脈瘤において、すべての層で、正常静脈と比べて発現が増加していた。また、血管内膜と慨膜のMMP-9は、正常静脈と比べ、それぞれ、31例(49.2%)と40例(63.5%)で増加していた。TIMP-1の発現は、静脈瘤と正常静脈の双方で認められなかった。
結論
MMP-1とMMP-9の発現増加は静脈瘤の発生機序に重要な役割を果たしていることが示唆される。
ジャーナル
Indian J Pathol Microbiol 2016
Clinico-histopathological study of varicose vein and role of matrix metalloproteinases-1, matrix metalloproteinases-9 and tissue inhibitor of matrix metalloproteinase-1 in varicose vein formation.