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逆流のある伏在静脈温存下での末梢静脈瘤切除による外科的静脈瘤治療の中期成績

背景

下肢表在静脈系の機能不全は大腿静脈と大伏在静脈の合流点より末梢へと進展していくというのが定説であったが、近年、末梢の表在静脈から大伏在静脈中枢へと逆行性に進展することもあるという新しいセオリーが提起されている。この考えに基づき、逆流のある伏在静脈を温存したまま、末梢の表在静脈瘤のみを外科的に切除した。本研究ではこの治療方法の中期的な治療成績を報告する。

方法

本研究は、2004年6月以前に逆流のある大伏在静脈を温存したまま、表在静脈瘤を外科的に切除した患者をレトロスペクティブに調べたものである。左右の両下肢はそれぞれ32領域に分割され、治療標的となる表在静脈瘤が32領域中のいくつの領域にまたがっているかを術前に評価した(NZT: the number of zones to be treated)。外科治療後、患者は6カ月、1年、その後は4年後まで毎年、症状、超音波検査によりフォローアップされた。

結果

303例の静脈瘤が上記方法により治療された。患者の平均年齢は52.7歳。大伏在静脈の逆流(SV reflux > 0.5)のみを認めた症例は85.8%、小伏在のみが11.9%、両方で逆流を認めたものが2.3%。平均NZTは6.05。約70%の症例で全フォローアップ期間において大伏在静脈の逆流がSV reflux < 0.5へと改善した。約80%の症例で症状が改善した。静脈瘤の再発は約90%の症例で認められなかった。またNZTが7以上の症例では再発をより多く認めたものの、大伏在静脈の逆流や症状の改善はより顕著であった。大伏在静脈の逆流がより広範囲で認められた症例では逆流の改善が不十分な傾向にあった。

結語

逆流のある大伏在静脈を温存したまま、末梢の表在静脈瘤のみを外科的に切除する治療方法は中期的に症状、逆流の改善という点において有効である。また表在静脈瘤をどの程度完全に外科的に切除しうるかが、この治療法の有効性を決定する主な要因と考えられた。

ジャーナル

Midterm results of the surgical treatment of varices by phlebectomy with conservation of a refluxing saphenous vein. J Vasc Surg