2012年学会資料
当院、阿保義久院長が5月24日「第40回日本血管外科学会学術総会(長野県)」メイン会場にて講演し、下肢静脈瘤根治手術の考案から、現在に至る血管内レーザー焼灼術までの進展を発表しました。
下肢静脈瘤は長年、羅患数が多いにも関わらず、治療が結実しづらく、病状に悩み続ける患者難民が多いという状況を説明。
1990年代まで入院下での施行が常識だった下肢静脈瘤治療を、阿保院長が外来にて日帰りで実施する手法を考案し、2005年に血管内レーザー焼灼術を導入以後、その「効果」と「患者満足度」を2007年、2008年、2010年の静脈学会にて発表し、いずれも90%以上の高い患者満足度を確認。血管内レーザー焼灼術の普及に大きく貢献した過程を説明しました。
講演の中で阿保院長は、外来(日帰り)ストリッピング手術への着手は、下肢静脈瘤治療のターニングポイントとなったことを説明し、この治療法は下肢静脈瘤患者の治療に対するニーズに大きく応える治療法であり、今後も長期にわたる治療成果、治療満足度の追跡調査が必要性であると説明しました。
また現在さらに効果が高いと判断される最高波長2000nmレーザーにて治療を行い、その効果、治療後満足度の定期調査を実施したところ、現在普及している他レーザーに対して、良好な治療成果を確認している旨を発表しました。
下肢静脈瘤外来根治手術を考案して
第40回日本血管外科学会学術総会(2012年5月24日)発表原稿
1. はじめに
下肢静脈瘤の根治的治療法としてのストリッピング手術は、外来で実施可能ですが、血管内レーザー焼灼術も保険適用となり、下肢静脈瘤に対する根治的治療は今後外来治療が基本となると考えています。
2. 下肢静脈瘤根本治療への取り組み
私は、ストリッピング手術を外来で実施する手法を1998年に考案し、以後、外来でのストリッピング手術を実践してきました。
3. 下肢静脈瘤の側面
下肢静脈瘤は罹患数が非常に多い疾患ですが、一方で治療が結実しにくく、医療機関を受診したにも拘わらず治療に到らず症状に悩み続ける患者が多いという側面があります。
4. 治療が結実にくい理由
その理由としては、医療サイドが、重症化しなければ治療に着手しないきらいがあり、一方で患者側も負担の大きい治療を忌避するため、結果として中等症以下の患者は治療機会を逸失する傾向にありました。
5. 下肢静脈瘤治療を日常的に施行するには
治療を実現しやすくするには、外来根治的治療の確立が必須であったといえます。
6. 外来ストリッピング手術実現のポイント
中枢側、末梢側の抜去血管断端の処理は局所麻酔で施行し、ストリッパーを挿入後、抜去する数秒間のみ覚醒の早い静脈麻酔を用いて一時的に麻酔深度を深めることにより外来ストリッピング手術を実践しました。
7. 外来ストリッピング手術の普及
以降、簡易麻酔であるTLA麻酔が台頭しEVLAへの応用もスムーズとなり外来根治治療の普及が進むこととなりました。
8. 外来ストリッピング例実績
2000年から最高年齢91歳、900肢の外来ストリッピング手術を経験しました。
9. 満足度調査
匿名の治療満足度調査では、配布506名中238名の回答が得られ、非常に高い治療満足度結果が得られました。
10. EVLAの治療妥当性検証
以降、ストリッピング手術とEVLAの比較検討や、中等症以上の静脈瘤に対するEVLAの有効性の検証を、独自に行い、EVLAが有効であることを確認しながら、同治療も含めて外来治療を積極的に進めてきました。
11. 治療実績
外来根治手術数は、ストリッピング手術に端を発し、治療効果が高いと考えられた波長レーザーに推移しながら増加してきました。
12. 手術実績
結果として4000肢を超える外来手術を実践してきました。
13. 治療満足度
EVLAの治療満足度については、総数3000名の方を対象として定期的に調査を実施、約半数の方から回答を得、いずれの調査も非常に満足度の良好な結果となりました。
14. まとめ
1998年に、伏在型下肢静脈瘤の外来でのストリッピング手術を考案し、以後、安全に同手術を施行してきました。その後、積極的に実施してきた血管内レーザー焼灼術も併せて、治療に対する患者の満足度は予想以上に大きいものでした。
15. 結語
外来ストリッピング手術の考案は、下肢静脈瘤治療が進展する中で大きなターニングポイントであったといえます。そして、EVLAも合わせて、外来根治的治療は、下肢静脈瘤患者の治療ニーズに大きく応える治療法といえます。ただし、下肢静脈瘤の病態を鑑みて、今後、長期にわたる治療成績・治療満足度の追跡調査が必要とも考えます。