がん遺伝子治療に関する広告についてcancergenetherapy
当院の遺伝子治療は口コミで広がりました。末期がんの患者さん達が予約なしで遠方から受診する例が度重なり、治療薬の準備が追い付かない事態が続いたため、2011年からは遺伝子治療の内容を開示したサイトを立ち上げて完全予約診療の形で治療を提供しています。
昨今、がん遺伝子治療に関する誇大広告や不適切な説明をしている医療機関についての記事を散見します。夢を抱いて治療を受けて期待通りの効果が得られなかった患者さん及びその家族と当該医療機関の間でしばしばトラブルが生じているというのです。おそらく、そのような医療機関はごく一部なのですが、こういうトラブルは非常に目立ちます。
末期がんの患者さんは藁をもすがる思いで遺伝子治療に臨まれます。そのような患者さんに対しては、ことさら、治療説明や診療姿勢については細心の注意を払い真摯に医療行為に臨まなければいけません。がん遺伝子治療で患者さん方に尊厳ある治療を提供することを心掛けている立場から、患者さん側と医療機関側とのトラブルの報道を目にするのは極めて残念なことです。このような報道が影響してか、真剣に標準治療を提供している医師の方々からも遺伝子治療を行う医療機関に対して厳しい眼が向けられがちです。
私達は、もはや標準治療で対応できないと宣告された末期がんの方々からの懇願を受けて2009年に遺伝子治療を開始しました。当時、進行がんや末期がんで余命宣告を受けていたにも拘らず現在でも元気に来院し治療を継続されている方もいらっしゃいます。一方で、残念ながらがんとの共存が適わずにお亡くなりになった方々も少なくありません。それでも、亡くなられた患者さんが残したメッセージやご家族の方々の温かい声に支えられ、励まされて遺伝子治療を継続しています。「決してこの治療の提供を止めないでください。これからも医療の発展に取り組み続けてください。」がん遺伝子治療で救命できなかった患者さんやそのご家族からの声を私たちは重く受け止めています。
がん遺伝子治療の臨床現場では、今までの常識では考えられない治療効果に出くわすことが多々あります。ですが、遺伝子治療が絶対的な治療(末期がんでも確実に救命できる治療)と誤解されないよう、細心の注意を払うべきだと常々感じています。標準治療による回復の望みを絶たれた患者さんやそのご家族は、遺伝子治療に過度な期待を抱く傾向にあるからです。
また、科学的な証拠の開示が不十分で公的機関からの承認がまだ得られていないこともあり、当院では遺伝子治療の広告を積極的に行うのは時期尚早だと判断しています。