大きな副作用がない
従来の薬剤 (抗がん剤、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害剤など) は、がんを異物と見なして直接攻撃するか免疫系を賦活してがん細胞を殺します。しかし、正常細胞を誤って攻撃したり、過剰な免疫応答が生じることで重篤な副作用が発生することがあります。
CDC6 RNAi 療法は、がん細胞を敵とみなして叩くのではなく、がん細胞をもともとの正常細胞の性質に戻すことで、その無限増殖を止めさせたり自己消去(アポトーシス:がんの自殺)を促したりします。すなわち、この治療によって正常細胞に負荷がかかったり、ましてや痛めつけたりすることはありません。遺伝子治療は、大きな副作用がなく正常細胞を犠牲にしないということが最も大きなアドバンテージと言えます。一時的な発熱や倦怠感などが出ることはありますが、治療後間もなく消失します。
BSCと宣告されても治療が続けられる
保険診療の中で実施される標準治療は、ある薬剤が無効になると次の薬剤を使用します。副作用が大き過ぎるという理由で別の薬剤に切り替えることもあります。しかし、使用できる薬剤にも限度があるため、手詰まりになると治療を打ち切らざるを得ません。そのような段階は「BSC:Best Supportive Care」といい、抗がん剤などの積極的な治療を止め、症状を和らげる緩和治療に徹します。しかし実際は、BSCと宣告されても積極的加療を希望する方々は大勢おられます。
遺伝子治療は、BSCと宣告された方に対しても実施できる治療法です。重篤な副作用がないので生活の質を落とさずに治療が継続できます。中には、BSCの状態から回復する例もあります。
保険診療では、末期がんの患者さんに対するケアにおいては限界あります。死期がどんなに近くとも、どのように生きていくかは患者さんが自由に決めるべきものです。有効な標準治療が提供されないために、自分の生きるスタイルを失いかけている患者さん方に、遺伝子治療は大きな意味があると感じています。
QOLが維持できる
進行がんの治療では、代替医療も選択肢の一つになります。悪徳な医療機関は論外ですが、適切に遺伝子治療を受けられれば、症状緩和(精神の安定、意欲の向上、体力の改善、腹水の減少、食欲の改善)も期待でき、標準治療では見失われがちなQOLの維持も目的とすることができます。
昨今、オプジーボに代表される免疫チェックポイント阻害剤が保険適用となり、進行末期がんの患者さんの治療成績が大きく改善することが期待されています。確かに、効果が期待できる治療薬の台頭は今後も継続していくでしょう。そのような中でも、遺伝子治療には大きなアドバンテージがあると私は思います。