先日久しぶりに東大病院を訪問し、外科教授室で先輩である教授、そして講師の先生とがんに対する先端医療としてのCDC6 RNAi 療法(遺伝子治療)や核酸医療について議論しました。
「元気でありながら手術の適応とならず、間に合わせの治療や緩和ケアを提案することになるケースは多く、そのような患者さん達に対する有効な治療の開発が必要」という私の見解が、日常的に手術による根治的がん治療に従事されているこれらの先生方と一致しました。
その意味で、「北青山Dクリニックで現在取り組んでいるCDC6 RNAi 療法(遺伝子治療)は開拓の意義がある」と、治療を重ねれば重ねるほど痛感します。 上述の「元気で社会生活を問題なく営んでいるのに手術が受けられない」とはどのような状態を言うのでしょう。がんは、早期に発見して手術(現在は内視鏡手術などの低侵襲治療も含む)で完全に切除できれば、根治させることができます。一方で、「最近調子が優れないので久しぶりに検査を受けたら進行がんだった」と言うようなことはよくあります。がんは無症状のうちに徐々に体の中で進行して、自覚症状が出たときにはかなり進行していることが多いのです。さらに病巣が他の臓器に転移している場合は、たとえ自覚症状がなく普通に生活していたとしても、手術を受けられないということが頻繁に見受けられます。
そのような場合には、抗がん剤による化学療法で対応するしかないということになります。手術によりがん患者さんを救うことが使命の外科医にとっては、その無力さを感じざるを得ません。最近注目されている重粒子線治療などの最先端医療もがんが局所に留まっている状態でなければほぼ無力です。そして化学療法(抗がん剤)のみで根治するケースは極めて稀なので、「少しでも延命する、症状を緩和する」ということが治療の目標になります。患者さんやご家族側の気持ちとしては、みすみす死を待つのではなく、最期まで何か有効な治療を受けたいと言うのが本音でしょう。
しかし、残念ながらステージ4の進行がんの多くは根治できず、いずれ絶命の時期を迎えることになります。担当医としては少しでも生活の質を下げずにできるだけ延命できるように治療プランを考案します。ところが、化学療法も進歩しているとはいえ、徐々に耐性と毒性が発生し、むしろ患者さんの生活の質が下がり苦しむ、というジレンマは避けられません。
このような患者さん達にはCDC6 RNAi 療法(遺伝子治療)は極めて期待できるものです。治療による副作用が少なく、末期がんであっても治療効果が期待できるからです。昨今急速に普及している免疫療法も、CDC6 RNAi 療法/遺伝子治療を付加することにより更に治療効果が高まると考えられます。
●まとめ●
CDC6 RNAi 治療が適している方
・手術などの根治的治療、または有効な標準治療が無いと診断されたが、体力や気力があるのでがんに対する何らかの治療を受けたい
・選択できる治療法が化学療法しかないが、副作用が強くて治療が継続できないので、それに代わる負担の少ない治療を望んでいる