下肢の深部静脈に血栓ができる深部静脈血栓症は、エコノミークラス症候群とも呼ばれ、その血栓が肺や脳に飛んで肺梗塞や脳梗塞を引き起こす非常に危険な疾患です。
下肢静脈瘤がその深部静脈血栓症を発症する危険因子となり得るのかについては未だに意見が分かれていますが、
「下肢静脈瘤があると必ず深部静脈血栓症が発症するわけではないが、下肢静脈瘤がある人は無い人にくらべて深部静脈血栓症になりやすい。」というのが血管外科医の共通認識だと思います。
下肢静脈瘤と深部静脈血栓症の関係に関する最新の知見を確認するために、先日改めて論文のレビューをしたところ、
「一般的な患者さんでは下肢静脈瘤と深部静脈血栓症には強い相関がある。特に過去に血栓塞栓症を来したり、ガンを併発していたり、病院に入院していて退院した直後で、下肢静脈瘤のある人は深部静脈血栓症に注意すべきだ。」という、ドイツからの論文や、
「遺伝的に下肢静脈瘤になりやすい人は深部静脈血栓症になりやすい可能性がある。」というスウェーデンからの論文などは注目に値します。
私の立場としては
下肢静脈瘤は、基本的に命に関わるようなことはないけれど、
重症化する可能性のある深部静脈血栓症と相関関係や遺伝的な関連性があり得るならば、
気になる症状が出た段階で早めに治療をするのが賢明でしょう、
という意見です。
血管内治療が原因となって深部静脈血栓症が発症したという報告も少数ありますので、こちらも注意して治療にあたらなければいけません。患者さん側は、治療を受ける際に担当医の経験と治療実績を確認することが理想です。