日帰り手術の歴史doctor-blog

質問: 日帰り手術は長く行われてきたものなのですか?

回答: 今では、下肢静脈瘤は日帰り手術がスタンダードとなりつつあります。10年前に、根治的なストリッピング手術を、私が国内で初めて外来日帰り手術で行ってから、徐々に日帰り手術を行う医療機関が増えてきました。そもそも下肢静脈瘤は罹患人口が多いにも拘らず、入院が必要で治療負担が大きいために医療サイドも患者サイドもなかなか治療に踏み切れない疾患のひとつでした。日帰りで問題なく行えることが示せるようになってから、長年治療に踏み切れずに悩んでいた患者さんたちが、気軽に治療を受けられるようになってきたのです。この10年来ストリッピング手術、そして最近の3年間は質の高いレーザー治療も、提供し続けておりますが、患者さん方の満足度は非常に大きく、我々もやりがいのある治療です。

私が、入院手術でしか行えなかった、下肢静脈瘤の根治手術(ストリッピング手術)を、日帰りで行うようになったいきさつと、その後の日帰り手術の推移をレポートしたものをつけます。

伏在型の下肢静脈瘤(ボコボコと浮かび上がるタイプ)の根治的な手術として、20世紀初頭からストリッピング手術(抜去切除手術)が行われてきた。

20世紀後半までは、ストリッピング手術は、下半身麻酔や全身麻酔下で施行されることが常識で切除範囲も下肢全長にわたるため、手術後1週間以上の入院が必要であった。

1990年代後半、当時慶応大学血管外科の折井医師のチームが高位ケッサツと硬化療法を組み合わせることで、日帰りで伏在型の下肢静脈瘤の治療を行う方法を実践し出した。通常1週間以上の入院を要するとされていた下肢静脈瘤の治療が外来で行えるということで当時は画期的な治療法だったが、再発率が大きいということが難点で、入院して行うストリッピング手術がやはり根治的な治療と評価された。

1998年、東大血管外科の阿保医師が麻酔法を工夫し(局所麻酔と静脈麻酔の組み合わせ)、その根治的ストリッピング手術を国内で初めて日帰り(外来)手術で行うことに成功した。以後、下肢静脈瘤のストリッピング手術が日帰りで全く問題なく行えることが判明し、他のドクター達も日帰り手術の実施を追従した。根治的な手術が完全に日帰り(在院時間数時間)で問題なく行えることが示された点で、日帰りストリッピング手術の発案は、当時は常識を覆すものであった。

以降、阿保医師が開設した「北青山Dクリニック」、次いで、阿保医師の手法を踏襲した医科歯科大学のチームが中心となって「あしのクリニック」が下肢静脈瘤の日帰り手術を精力的に行ってきた。

下肢静脈瘤の日帰りストリッピング手術が安定して供給されてから5年ほど経過して、最新のロングパルスヤグレーザーによる血管内治療の効果が良好であることが米国で示された。医科歯科大学の血管外科チームがそのレーザー治療の臨床試験を行い問題がないことを確認。北青山Dクリニックが東京都で初めてエンドレーザー治療を開始。現在までエンドレーザー治療を国内施設の中で最も多く安定提供している。 (文責 アークワイズ)

監修医師

院長名 阿保 義久 (あぼ よしひさ)
経歴

1993年 東京大学医学部医学科 卒
1993年 東京大学医学部附属病院第一外科勤務

虎ノ門病院麻酔科勤務
1994年 三楽病院外科勤務
1997年 東京大学医学部腫瘍外科・血管外科勤務

2000年 北青山Dクリニック開設

所属学会 日本外科学会
日本血管外科学会
日本消化器外科学会
日本脈管学会
日本大腸肛門外科学会
日本抗加齢学会