症例・治療事例CASE
がん遺伝子治療スキルス胃がん
【がん遺伝子治療】症例(6)60代女性 スキルス胃がん
2021.11.30
ご相談内容 | 2019年1月、食欲不振を主訴に内視鏡検査の後、近医のCT検査でスキルス胃がん(ステージ4)の診断、腹膜播種が確認され、即日SOX療法を開始。当初は吐き気が辛かったが、その後副作用は落ち着いた、とのこと。同2月に、診療情報提供書を持参され当院を受診。遺伝子治療を平行して行いたいとご希望がありました。遺伝子治療の期待と限界を説明した上で、「本日試験的に1度治療を受けたい。」とのこと、当日1回目の遺伝子治療を行いました。 |
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治療方針 | 点滴、経皮的局所注射、経皮的腹腔内注射により遺伝子治療を実施し、化学療法を補完する。 |
治療経過 | ・カウンセリング後、初回遺伝子治療実施。1Uを点滴にて投与。投与後の倦怠感や吐気など副作用が全く生じなかったことから遺伝子治療の継続を予定。 ・2019年3月~6月 4回遺伝子治療実施。 化学療法は2クールを終了。 化学療法後は、吐き気、顔の浮腫み、歯が浮くような違和感、味覚変化などの副作用があるとのこと。 遺伝子治療は2U/回、点滴、腹腔内(胃前壁・腹腔内)局所注射の分割投与にて4回実施。 2019年4月、CTデータ持参。原発巣の縮小が認められたが、化学療法の副作用が以前に比べて強くなってきたので不安とのこと。顕著な腹水がないので経過観察。 ・2019年7月~2019年8月 2回遺伝子治療実施。 SOX療法ではしびれが増強されたため、3クールで終了し、内服での化学療法に変更。 遺伝子治療製剤の投与は4~5U/回に増量。点滴、胃前壁局所注射、腹腔内投与を2回実施。 ・2019年8月、遺伝子治療7回目を終了した後、CT検査で局所、播種巣とも縮小を確認。 ・2019年10月~2020年5月で 5回遺伝子治療実施。 遺伝子治療として、4~5U/回、点滴、胃前壁局所注射、腹腔内投与を5回実施。 フォローCT検査では、著変なく、局所、播種巣ともに縮小を維持。 がんをほぼコントロールできている状態。 ・2020年7月~12月で 4回遺伝子治療実施。 4~5U/回で、点滴、胃前壁局所注射、腹腔内投与を4回実施。 日常生活などに特に支障なく症状安定。 |
治療状況 | 化学療法に併用して遺伝子治療を実施し、腹膜播種巣がほぼ消失。胃の主病巣及びリンパ節転移は縮小傾向で安定。ステージ4のスキルス胃がんが治療開始後3年以上安定の状態。 |
治療期間 | 2019年2月~2020年12月(1年10カ月) |
費用 | 治療総額:計16回の治療でおおよその治療費 計 4,147,000円。(税込) ※遺伝子製剤の投与量単位(U:unit)について 遺伝子治療製剤の投与ボリュームを表現する際に ・Titer: 遺伝子を運ぶウイルスベクター粒子の数または感染価 ・ベクターコピー数 などが用いられます。 投与量単位(U)は、当院で便宜上設定したもので公的な基準ではありません。 具体的には、当院で設定している1Uは1.0×10^8(10の8乗)=1億ベクターコピーに相当します。 |
治療のリスク | 大規模な二重盲検試験が実施されておらず未承認治療です。 注射部の内出血、軽度疼痛、一過性の発熱(37-38℃)など、軽微な副作用が生じる場合があります。 |