症例・治療事例CASE

がん遺伝子治療大腸がん

【がん遺伝子治療】症例(13)70代女性 大腸がん(S上結腸~直腸がん)肝・肺転移

2023.01.05

治療前

治療前

治療後

治療後
ご相談内容 2021年3月大腸がんを近医で指摘され、治療のため来京。東京のがん診療連携拠点病院にて5月より治療開始。S状結腸~直腸癌 肝転移 肺転移疑い。現在FOLFOX投与、温熱療法も併用。追ってゲノム検査でマッチングした分子標的薬を開始予定。補完治療として、遺伝子治療を希望。
治療方針 点滴、動脈カテーテルによる投与により遺伝子治療を実施。標準治療を補完する。
治療経過 2021年3月
大腸がんを近医で指摘される。
S状結腸~直腸癌 肝転移 肺転移疑い。

2021年5月
がん診療連携拠点病院にて治療開始(FOLFOX投与)、温熱療法も併用。
補完治療として、遺伝子治療を計画。
生命予後を規定するのは肝転移。
遺伝子治療は10U/回で開始。

2021年6月
遺伝子製剤 10Uを2回点滴投与。副作用生じず。
FOLFOXの副作用は、手の痺れと口内炎程度。「調子は悪くない。便が細かったのが太くなった。がん治療への不安が大きく涙が出たり気分が落ち込んでしまう。」とのこと。
付き添いの息子さんより「ある程度化学療法を実施したら、来月後半は化学療法をいったん休止して、遺伝子治療を集中的に実施することも考えている。」

2021年7月 
遺伝子製剤 10Uを2回点滴投与。
「体調は悪くない。抗がん剤治療でたまに下痢がある程度。温熱療法で熱中症のような症状があった。」
抗がん剤の影響か、両上肢皮膚荒れ、指先感覚の不良がある。
遺伝子治療4回終了後のエコーでは、左葉の転移巣が縮小している印象。本人の自覚症状(疲労感・排泄・食欲)も改善している。
腫瘍マーカーも改善していることから、治療効果ありと判断している。遺伝子治療は、腫瘍マーカーの改善に直結しないことはあるが、
症状改善、再発予防、がん細胞の本質的なコントロールに有効である可能性あり。
まとめて遺伝子治療をしたいと希望あり。
今後は年末まで、月1回動脈カテーテルでの投与、月1回点滴での投与で、エコー検査も月1回は実施して治療効果を確認しながら治療を続ける計画。

2021年8月 遺伝子製剤 10Uを点滴にて投与。

2021年9月 遺伝子製剤 10Uを動脈カテーテルにて投与。

2021年10月 遺伝子製剤 10Uを点滴にて投与。
抗がん剤の副作用が強く、口内炎のため好物が食べられない。

2021年11月
遺伝子製剤 10Uを点滴にて1回、動脈カテーテルにて1回投与。
がんゲノムプロファイル持参。分子標的薬エンコラフェニブ+ビニメチニブ+セツキシマブなどが治療薬剤候補。
食欲あり。皮膚・粘膜障害あり。
他院で行っていた高濃度ビタミンC点滴も実施。

2021年12月 遺伝子製剤 10Uを点滴にて投与。
同月、がん診療連携拠点病院でのCT検査では、放射線医の読影は若干増大、担当医は問題ないと判断。

2022年1月 遺伝子製剤10Uを動脈カテーテルにて1回投与。
化学療法後のしびれあり。食欲は問題がない。気分は滅入りがち。

2022年2月 遺伝子製剤10Uを点滴にて1回投与。
化学療法の副作用で体調悪く、食べられない。

2022年3月 遺伝子製剤10Uを動脈カテーテルにて1回投与。
「体調は悪くない。がん診療連携拠点病院で行った腫瘍マーカーの結果はよい」とのこと。
今月オーストラリア旅行に行くので、シミ治療、腹部たるみ改善など美容治療の希望あり。

2022年4月
遺伝子製剤 遺伝子製剤10Uを点滴にて1回投与。
同日美容診療受診。
「地元ではシミ・注入などの美容治療をして綺麗にしていたが、抗がん剤治療をしてからシミが増えてしまった。がん治療で当院に通っているが、美容もできると聞いたので一緒にお願いしたい。」と希望あり。
がん遺伝子治療と同日に、シミ治療も随時行う。
4月末、肝臓のあたりがキリキリと痛むとのこと、対症療法薬の処方。
「がん細胞が反転して大きくなってきた際には、抗がん剤の種類を変える以外に、遺伝子治療で方法がありますか?」との質問あり。例えば、10U→20Uなど、投与量を増やすことが可能と回答。

2022年5月
がん専門病院でのCT検査。
CTでは、濃染部はまだらになっているが、淡い部分はやや面積増大。抗がん剤は2nd line変更予定。
次回、遺伝子治療製剤の増量を希望。しばらくは20U/回で継続する。

2022年6月
遺伝子製剤 20Uを動脈カテーテルにて1回投与。
抗がん剤は、5-FCに変更。「吐き気、下痢も落ち着いて食欲もある。時々脛の痛みがある。肝臓周辺の痛みは肋間神経痛と言われてセレコックスを飲んで痛みは落ち着いている。」
6月下旬、右肋骨周囲から右下腹部にかけて疼痛あり。帯状疱疹の疑い。

2022年7月 遺伝子製剤 20Uを点滴にて投与。

2022年8月 遺伝子製剤 20Uを動脈カテーテルにて投与。

2022年10月 遺伝子製剤 20Uを動脈カテーテルにて投与。
「治療を開始してから1年半になる。開始当時よりすごぶる調子良い。運動もできる。食欲ある。明日からマレーシアの離島に行く予定。肝腫瘍の状況も改善し、採血データも良い。がん診療連携拠点病院の担当医が不思議がっている。」とのこと。
現在も遺伝子治療継続中。
治療状況 大腸がん S状結腸~直腸がん ステージⅣ 肝転移 肺転移疑いと診断され、がん診療連携拠点病院での化学療法と併用して遺伝子治療を行った。遺伝子治療開始1年で病巣は安定状態を維持し、海外旅行や美容治療を希望されるほど本人の自覚症状(疲労感・排泄・食欲)も改善した。抗がん剤は、2nd lineに進み、遺伝子製剤の量を10Uから20Uへ増量した。20Uでの投与4回後、肝腫瘍の状況が改善し、採血データも好転している。現在も遺伝子治療を継続中。
治療期間 2021年6月~2022年10月(1年4か月継続中)
費用 治療総額:計18回の治療で治療費 計 10,164,000円。(税込)

※遺伝子製剤の投与量単位(U:unit)について
遺伝子治療製剤の投与ボリュームを表現する際に
・Titer: 遺伝子を運ぶウイルスベクター粒子の数または感染価
・ベクターコピー数 
などが用いられます。
投与量単位(U)は、当院で便宜上設定したもので公的な基準ではありません。
具体的には、当院で設定している1Uは1.0×10^8(10の8乗)=1億ベクターコピーに相当します。
治療のリスク 大規模な二重盲検試験が実施されておらず未承認治療です。
注射部の内出血、軽度疼痛、一過性の発熱(37-38℃)など、軽微な副作用がある場合があります。

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