症例・治療事例CASE
がん遺伝子治療スキルス胃がん
【がん遺伝子治療】症例(12)40代女性 スキルス胃がん 腹膜播種
2024.06.21
治療前
治療後
ご相談内容 | スキルス胃がん・腹膜播種・大動脈周囲リンパ節転移疑いを指摘された。 緩和的化学治療の提案を受けたが、複数の幼少時がおり、子供の成長を見届けたいし、今の生活を保ちながら治療を行いたいので、 『副作用が少なく生活の質を保つ』遺伝子治療を希望している。 また標準治療については当院と連携のとれる医療機関で受けたい。 |
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治療方針 | 胃がん局所にはエコーガイドで直接穿刺による投与、腹膜播種巣に対しては腹腔内投与で遺伝子治療を実施する。 |
治療経過 | 2022年9月 他院のPET/CTにてスキルス胃がん・腹膜播種・大動脈周囲リンパ節転移疑いを指摘された。 緩和的化学療法を提示されたが、今の生活の質を保ちながら最善の治療をしたい思いで遺伝子治療を希望。 カウンセリング後、当院と連携可能な病院を紹介し、9月末より化学療法、先んじて遺伝子治療を開始する。 遺伝子治療は初回10U、以降1~3週間間隔で10U、1~2か月で100U以上の送達を目指す。 2022年9月 遺伝子製剤 10Uを2回投与。遺伝子治療の副作用はない。 その後、標準化学療法を実施、吐き気、手指のしびれが1週間ほど持続した。 経過観察の内視鏡で病巣が劇的に縮小傾向あり。 標準治療の担当医も1回の化学療法(遺伝子治療2回先行している)で 腫瘍がこのように縮小したのは初めてだとのコメントあり。 2022年10月 遺伝子製剤 10Uを2回投与。 10月末に化学療法2クール目終了時には、だるさ、手足やのどのしびれ、吐き気などがあり 「治療前に戻ってしまったようで不安」とのことだったが、 抗がん剤の副作用であり、治療経過は良好であることを説明。 2022年11月 遺伝子製剤 10Uを4回投与。 体調は良好。 「遺伝子治療の後は体調が良い。元気すぎて大丈夫かなと思うくらいです。」と発言あり。 化学療法の副作用も少なくなり、食事量も増えた模様。 11月下旬から3クール目を予定。終了後にEGD(上部消化管内視鏡検査)で評価予定。 2022年12月 遺伝子製剤 10Uを3回投与。 「化学療法の副作用は手足と喉、舌にしびれ、不快な満腹感、みぞおちの痛みがあり不安感がある。」とのことで 腹部視診・触診し、血液検査。標準治療の担当医とも情報共有し、 腫瘍マーカーと併せてみても、急激に悪化しているとは考えにくく副作用であることを説明 「先生の説明を聞くと安心します。わかりました。」と発言あり安堵される。 12中旬にEGD(上部消化管内視鏡検査)、CT検査を行い、 「リンパ節の腫瘍は小さくなっていて、胃は柔らかくなってきているけどまだ壁が厚いので もう少し時間が必要だ」と標準治療担当医から説明を受けたとのこと。 遺伝子治療製剤を計100~200Uの投与を目標に現在のペースで治療を継続。 症状が改善安定したら治療頻度を少なくする(1~3か月に1回)予定。 2023年1月 遺伝子製剤 10Uを2回投与。 「特に体調は問題なく、ご飯も食べられていて元気です。」とのこと。 2023年2月 遺伝子製剤 10Uを2回投与。 「化学治療の副作用で食欲低下、吐き気がある。」とのこと。 2023年3月 遺伝子製剤 10Uを2回投与。 「食欲戻り、痺れもなく体調は良い。」とのこと。 3月初旬 EGD(上部消化管内視鏡検査)実施。 「前回と比較し太いFoldはさらに縮小しているように見える。 胃角部の潰瘍性変化は今回の方が鮮明。 胃の全体的な拡張はimage上は改善している。腫瘍辺縁から生検採取。 十二指腸球部に2センチほどの隆起性変化あり、生検採取。 腫瘍であれば原発巣と不連続であり壁内転移という扱いになるか。」 3月中旬 CT実施。 「胃壁の肥厚は以前と比較して明らかに改善している。 傍大動脈領域の軟部陰影も縮小し、依然と比較して 明らかに解剖学的構造が明瞭に視認できるようになった。」と標準治療担当医コメント。 EGD、CTとも経過良好のため 遺伝子治療間隔を次回から1か月おきに変更。 2023年4月 遺伝子製剤 10Uを1回投与。 「食欲は戻り、化学療法の副作用も指先のしびれだけになった。」 2023年5月 遺伝子製剤 10Uを1回投与。 「体調は悪くない。直近の化学療法は副作用が強く、腹痛、下痢、吐き気があった。」 5月下旬 EGD(上部消化管内視鏡検査)実施。 「前回同様に胃角上小弯に潰瘍形成を認めるが、 前壁側は瘢痕組織に置き換わっているように見える。 潰瘍性病変から生検採取。 十二指腸の前回認められる上皮性変化は今回明らかでなかった。 2023年6月 遺伝子製剤 10Uを1回投与。 6月上旬のCT所見でがんを疑う部位はあった模様。 EGD検査結果、病巣は残存しているが縮小傾向にある。 2023年7月 遺伝子製剤 10Uを1回投与。 「特に気になる症状はない」 病状は安定しているので次回は2か月後の予定。 8月初旬 EGD(上部消化管内視鏡検査)実施。 「前回と比較して胃の拡張程度は著変なし。 小弯側の潰瘍性病変は前回より潰瘍面が縮小。生検2点採取。」 と標準治療担当医コメント。 2023年9月 遺伝子製剤 10Uを1回投与。 化学療法継続中。 「食欲はあり、指先の痺れも改善、特に問題はないが、 心窩部にしこり感若干あり気になる」とのこと。 2023年11月 11月初旬 EGD(上部消化管内視鏡検査)実施。 「体上部の拡張については著変なし。 胃角小弯の隆起成分はやや目立つ様にも見えるが、 経時的な経過を追ってみると大きな変化はない。 が、はっきりと病変は認識されCRに向かうことはないように思われる。」 と標準治療担当医コメント。 11月下旬 遺伝子製剤 10Uを1回投与。 「化学治療の副作用で、関節痛、だるさ、脱毛があった。」 2023年12月 遺伝子製剤 10Uを1回投与。 「白血球減少症があり、化学治療の治療期間を通常よりあけて行っている。 体調としては良い。」 2024年1月 遺伝子製剤 10Uを1回投与。 「抗がん剤治療のだるさが残っている。鼻をかむと鼻血が出る。 胃や右腹部に痛みや圧迫された感じがる。」 2024年2月 2月初旬 EGD(上部消化管内視鏡検査)実施。 「今回は胃角上の腫瘍形成が顕著であるが、腫瘍辺縁の高さは目立たない。 腫瘍辺縁生検2点採取。 口側は粘膜下進展がはっきりと認められるが、口側の胃壁の進展は良好なままである。 腫瘍形成が腫瘍縮小に伴いものかどうか…」と標準治療担当医コメント。 2月下旬 遺伝子製剤 10Uを月1回投与。 TMは改善傾向。直近の内視鏡検査では、腫瘍形成はあるが周堤の性状から がんの活動性が活発化したようにはみえない。 病理検査上は、がんは存在しているものの引き続き副作用の発現を抑えながら、 化学療法と、遺伝子治療の補完を継続したい。 2024年3月 遺伝子製剤 10Uを1回投与。 標準治療担当医師から この4月のEGD、CT検査結果次第では、 審査腹腔鏡検査を実際した上で、根治手術を検討するとコメントあり。 2024年4月 4月初旬 EGD(上部消化管内視鏡検査)実施。 「胃角上小弯の腫瘍による潰瘍は前回より大きくなった様に見えるが、 口側の粘膜下進展については縮小しているようにも見える。 大弯側の壁伸展は良好でgiant foldも目立たない。Fornixに向い一条foldあり生検採取。 いずれもnegativeなら遠位側胃切除術で切除可能か。十二指腸、胃がんの浸潤なし。 4月下旬 遺伝子製剤 10Uを月1回投与。 標準治療担当医病院にて審査腹腔鏡+ポート増設 細胞診は陰性だが播種そのものはごくわずか、2nd lockで腫瘍浸潤が縮小したら切除予定。 2024年5月 遺伝子製剤 10Uを1回投与。 「化学治療は静脈投与と腹腔内投与を併用している。調子は良い。」 2024年6月 遺伝子製剤 10Uを1回投与。体調良好。 同日 EGD(上部消化器官内視鏡検査)実施。 「既知の胃がんは著変なし。やはり口側にFoldが伸展しているように見え、腫瘍浸潤を否定しておきたく (極小残胃が可能かどうかの判断)3点生検、各Foldから。十二指腸、壁の伸展不良領域は無し。 前回と比較して著変なし。腹腔洗浄細胞診が陰性化したらconversion surgeryを検討したい。 2024年8月 遺伝子製剤 10Uを1回投与。体調良好。 2024年9月 EGD(上部消化器官内視鏡検査)実施。 「前回と比較して腫瘍の潰瘍面はより明確にtype3とすべき病変であるが、前回よりも粘膜下進展は 目立たない印象ではある。次回は化学療法の進捗にあわせてconversionを行うとしても 本日のEGDからはTG(胃全摘術)ではなく DG(幽門側胃切除術)で対応したい印象を強く持つ。」と標準治療担当医師のコメント。 引き続き遺伝子治療を併用しながら 根治手術可能な状態を目指している。 ※2024/6追記 ※2024/9追記 |
治療状況 | 当院と連携した医療機関での化学療法と遺伝子治療を実施。初期治療の段階であるが経過は極めて良好。 引き続き遺伝子治療を併用しながら、根治手術可能な状態を目指している。 |
治療期間 | 2022年10月~2024年8月(1年10か月)継続中。 |
費用 | 治療総額:計31回の治療で治療費 計 14,322,000円。(税込) ※遺伝子製剤の投与量単位(U:unit)について 遺伝子治療製剤の投与ボリュームを表現する際に ・Titer: 遺伝子を運ぶウイルスベクター粒子の数または感染価 ・ベクターコピー数 などが用いられます。 投与量単位(U)は、当院で便宜上設定したもので公的な基準ではありません。 具体的には、当院で設定している1Uは1.0×10^8(10の8乗)=1億ベクターコピーに相当します。 |
治療のリスク | 大規模な二重盲検試験が実施されておらず未承認治療です。 注射部の内出血、軽度疼痛、一過性の発熱(37-38℃)など、軽微な副作用がある場合があります。 |