北青山Dクリニックが2017年を迎えて下肢静脈瘤の次世代治療であるスーパーグルーによる血管閉鎖術(Venoclose: べノクローズ)に本格的に着手したことは既にお伝えしました。
当初の見込み通り、この治療を受けた患者さんの治療経過と満足度は非常に良好です。レーザーや高周波(RF)よりも低侵襲な下肢静脈瘤の血管内治療として今後大いに普及すると思います。
さて、医療用瞬間接着剤によるこの治療を国内で導入している医療機関は現在非常に限られています。治療法の呼び名も統一されていません。グルー治療、スーパーグルー、シアノアクリレート、ヒストアクリル・・・この治療を形容する際に様々な言葉が使用されています。
べノクローズという呼び名も、静脈を表す「vein」 と閉鎖を意味する「close」を合成して作った言葉です。確立された検査法である静脈撮影は「vein」と撮影の意味を表す「graphy」が合成されてベノグラフィー(Venography)と呼ばれており、べノクローズVenocloseはそれに倣った表現です。
先日、日経ヘルスの取材を受けた際には、この治療法を「グルー治療」と表現しました。しかし、グルー治療は、欧米の血管治療に関する最新の教科書で「CAE」と表現されています。また、治療カテゴリーとして「NTNT」 に分類されています。
CAEはCyanoacrylate Embolization ( シアノアクリレートによる塞栓術 )、NTNTはNon Thermal & NonTumuscent ( 熱を発生させず広範囲麻酔が不要 )を意味します。特に後者の表現は示唆的です。従来の血管抜去術(ストリッピング手術)に代わって下肢静脈瘤の標準治療となっているレーザーや高周波による血管閉鎖術は、TT(Thermal & Tumuscent)すなわち、熱を発生するし広範囲麻酔が必要な治療、と表現しているのです。
もはや、下肢静脈瘤の治療から手術の概念は外され、血管内治療が標準治療であり、それも、TTかNTNTのいずれかに分類するというのが国際基準になっています。最も体に負担が掛からないNTNTの中で代表的な治療法がCAEということになります。
ただ、CAEやNTNTと言っても、国内ではよくわからないだろうということで、メディカルグルー(医療用接着剤)、スーパーグルー(強力接着剤)などの言葉が用いられているのです。この治療の本来の意味である「医療用瞬間接着剤を用いて静脈を塞栓する治療」を的確に表現する言葉として「べノクローズ」を私たちは選択しました。
ところで、このべノクローズによる治療経過は予想以上に良好です。下の写真は、治療前とべノクローズを実施して4日後の状態を撮ったものです。レーザーや高周波による治療は下のような改善を得るには最低でも数週間から数か月を要します。治療後1週間程度は内出血や腫れが見られることもあります。べノクローズは、内出血や腫れもなく数日で静脈瘤が殆ど消えてしまいました。以前お話ししたとおり、治療後に弾性ストッキングを履かなくてよい、というのも大きな魅力です。
◆治療のリスク・費用◆
スーパーグルーによる血管閉鎖術(ベノクローズ)による治療
(特徴・リスク)
・TLA麻酔(広範囲の局所麻酔)が不要なので手術時の負担が軽減されます。
・手術後に弾性ストッキングを着用する必要が原則としてありません。
・皮下出血や神経障害のリスクが血管内焼灼術よりも小さくなります。
・高周波による血管内焼灼術と比較した複数の試験で治療成績は良好です。
・NBCAを使用すると手術時間が極めて短時間(数分)で済みます。
・レーザーや高周波治療に比べて長期成績報告がありません。
・巨大な静脈瘤や蛇行が激しく複雑なタイプの静脈瘤には不向きです。
(治療費用)
片下肢で40万円程度、両下肢で70万円程度
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