先日、下肢静脈瘤の血管内焼灼術の見学のためにロシアから血管外科医がいらっしゃいました。
彼はモスクワ中心にある1000床ほどの病院の静脈瘤治療センターで働いていて、日本で最新医療を学ぶために北青山Dクリニックを選択してくれたとのこと。
国内からは何度か見学に来ていただいたことがありますが、遠くモスクワの地から医師が訪れたのは初めてのことでした。
患者さんも、中国・モンゴル・サハリンなどから治療を受けに来る方が増え、当院の診療圏が大陸に拡大するのを感じる昨今です。
モスクワから来訪されたその彼が言うには、
「ロシアでは5人に1人が下肢静脈瘤を患っている。
しかし、大柄で手術が難しい一方で最新の治療が普及していないので再発率が高い」と嘆かれていました。
また、日本では保険診療で最先端の血管内治療が実施できることに非常に驚いていらっしゃいました。
ロシアでは公的な保険はなく、民間の保険でも下肢静脈瘤治療はカバーされないとのことでした。
当日は4名の患者さんに対する下肢静脈瘤の血管内治療を、手術をする私の横で見学されました。
そして、高周波(RF)焼灼術、1470nm、2000nmの血管内レーザー治療、フォーム硬化療法など、ほぼ全ての静脈瘤治療の光景を写真撮影されていました。
手術中のスタッフの動きやレーザー・高周波治療機器、検査モニターなどを動画で撮影しながら、治療のポイント、治療チームの役割分担などを質問してこられました。
ロシアには血管内レーザーはまだ普及しておらず、ドイツ製の高周波(ラジオ波、RF)機器は使用したことがあったそうです。
また、静脈瘤の手術は血管を引き抜くストリッピングやスタブアバルジョンなどの切除手術が主として実施されているようでした。
日常診療の最中で慌ただしい中での見学であり十分な対応はできませんでしたが、
「非常にためになった。最新治療が良く理解できた。」とおっしゃって下さいました。
勤務されている病院では、血管治療の他にも、内視鏡治療や救急医療、拳銃による事故や怪我の治療に忙しいが、下肢静脈瘤の患者さんは非常に多いので最新治療の導入を目指しているとのことでした。
たくましく、いかにもウオッカを底なしに飲めそうな、気さくで陽気なロシアの外科医の、突然の来訪に北青山Dクリニックの医療現場がふと明るくなった一日でした。