がん遺伝子治療スキルス胃がん
【がん遺伝子治療】症例(21)70代女性 スキルス胃がん
2024.10.01
<遺伝子治療開始前 内視鏡所見>
胃体部前壁大弯後壁に広がる粘膜肥厚顕著
スキルス胃癌に典型的な所見を認める。
ご相談内容 | 2024年4月に食欲不振で近医受診、MDL(消化管造影検査)で異常なし。 5月EGD(上部消化器官内視鏡検査)の組織検査ではnegative。 6月EGD(上部消化器官内視鏡検査)の組織検査でpositive、スキルス胃がんの診断。尿管ステント留置。 7月より、オプジーボ エルブラッド TS1 2投 を開始。 化学療法のみでは不安なので、遺伝子治療の併用を希望。 現在、食欲不振と腹痛が主訴。 |
---|---|
治療方針 | 標準治療を補完する立場で、点滴、局所注射により遺伝子治療を実施。 |
治療経過 | 2024年7月 ご親族代理での遺伝子治療カウンセリング。 標準治療を担当する医療機関より診療情報提供あり。 EGD(上部消化器官内視鏡検査)胃体大湾~後壁噴門部にかけて粘膜肥大、びらんあり。 CT 尿管閉塞疑い。腹腔内に播種層広範囲に広がる。 1回10U~20U 1~2週毎 1~2ヶ月で100~200Uの送達を目指す。 副作用が大きくなければ化学療法中でも並行して実施可能。 「患者本人と相談の上、治療開始時期を決めたい」とのこと。 2024年7月 遺伝子製剤10Uを1回 点滴、局所注射にて投与。 化学療法の1クール目を開始したが、さしたる副作用はない印象。 次回から20Uの投与を予定。 遺伝子製剤20Uを2回 点滴、局所注射にて投与。 2024年8月 遺伝子製剤20Uを4回 点滴、局所注射にて投与。 治療後、2日間38度台の発熱。 数日は注射部に疼痛あり。セレコックス処方し軽快。 「なんとなく改善傾向あり。摂食量はまだ十分ではないが、 声の張り感が出てきた。排泄は軟便だが毎日出る」 2024年9月 遺伝子製剤20Uを2回 点滴、局所注射にて投与。 9月の治療後は熱は出なかった。心窩部痛が継続しているがどうにか自制内。 「摂食量増えてきている印象あり」 積算投与量が190Uになるまで予定通り治療を継続、それ以降は治療間隔を2~4週間に延ばす。 「この治療を1回休んだら、体調が悪化したので、遺伝子治療は効いていると思う」と。 引き続き遺伝子治療を継続中。 |
治療状況 | 食思不振から近医受診。スキルス胃癌、腹膜播種の診断。 尿路閉塞も来し、尿管ステントを挿入後、化学療法開始。 病期が相当進行しており、食思不振、腹痛が増悪することから、 化学療法に並行して遺伝子治療の実施を希望。遠方からの受診。 治療効果を確認しながら遺伝子治療を開始。 過去の治療実績から2カ月間で200単位相当の遺伝子製剤投与を目標に設定。 1-2週間に1回の頻度で治療効果を確認しながら治療を積み重ねる方針とした。 患者さん本人は当初遺伝子治療の併用に懐疑的だったが、 治療を重ねるごとに症状が楽になり、食思改善、腹痛減退を自覚。 当初の予定通り治療を完遂。経過を見ながら維持治療へ移行となった。 スキルス胃がん 腹膜播種で 通過障害を来した重症例であったが 初期治療から比較的短期間に相当量の遺伝子治療を実施したことが功を奏した可能性がある。 |
治療期間 | 2024年7月~2024年9月(2か月)継続中 |
費用 | 治療総額:計9回の治療で治療費 計 6,044,500円。(税込) ※遺伝子製剤の投与量単位(U:unit)について 遺伝子治療製剤の投与ボリュームを表現する際に ・Titer: 遺伝子を運ぶウイルスベクター粒子の数または感染価 ・ベクターコピー数 などが用いられます。 投与量単位(U)は、当院で便宜上設定したもので公的な基準ではありません。 具体的には、当院で設定している1Uは1.0×10^8(10の8乗)=1億ベクターコピーに相当します。 |
治療のリスク | 大規模な二重盲検試験が実施されておらず未承認治療です。 注射部の内出血、軽度疼痛、一過性の発熱(37-38℃)など、軽微な副作用がある場合があります。 |