ハンドベイン

ハンドベインとは

ハンドベインとは、手の甲や腕の血管が浮き出て視覚的に目立って見える状態のことを言います。基本的には病気ではありません。ただし、中には手や腕のだるさや痛みの原因となるケースもあります。また、手や腕は日常生活で人の目に触れる機会が多いため、人の目線が気になるという理由で治療を希望される方が非常に多いのもその特徴と言えます。ハンドベインは病気ではないので積極的に治療を必要とするものではありませんが、これにより精神的に非常に大きなストレスを抱えている方は少なくないため、私たちは治療を希望される方に下肢静脈瘤の血管内治療で用いるレーザー治療の技術を応用して治療を提供しています。点滴や採血などに用いることがある手や腕の大切な静脈の治療になりますので専門的な治療技術と細心の注意の下で対応しています。

「ハンドベインレーザー治療」2022年6月4日公開


典型的なハンドベイン

典型的なハンドベイン例

血管内レーザー治療は、従来しばしば用いられていた硬化療法と異なり、血管を完全につぶさないように治療をすることも可能です。治療後は一時的に内出血や腫れが生じ皮膚の感覚の回復にしばらく時間を要しますが、日常生活は問題なく送ることができます。
(写真症例:54歳 女性 左手甲~前腕 使用針本数 17本 レーザーtotal 左1220J 305秒)

ハンドベインの名前の由来

「ハンドベイン」とはそもそも病名を表す正式な医療用語ではありません。本来は「手の血管」という意味でしかありませんが、手の甲や前腕にくっきりと浮き上がる血管が、通称「ハンドベイン」と呼ばれています。手の甲の血管や前腕の血管が数㎜~5㎜程度に拡張して、浮き出てくる状態に悩まれる方は少なくありませんが、これら手の甲や前腕の血管拡張は、弁不全など病的な状態が背景にあるわけではありません。
一方、脚に膨らむ瘤(こぶ)状の病的な血管(静脈)は下肢静脈瘤と称されますが、下肢静脈瘤の中で数㎜径の比較的小さなものは「網目、クモの巣静脈瘤」に分類されます。これら小さな静脈瘤は血行上で問題を来すことは無く、病的な症状を呈することも殆どありません。治療目的は美容上の改善が主で、病的な静脈瘤(伏在静脈瘤など)と区別するために、Leg Vein(レッグべイン)としばしば呼ばれます。これに呼応して、同様に美容治療の対象となる手の甲や腕の血管拡張のことをHand Vein(ハンドべイン)と呼ぶようになったようです。
まれに、手・腕の血管の逆流防止弁が壊れて病的な逆流が生じて静脈が拡張する例や、先天的に動脈と静脈の間に交通(シャント)が生じて静脈が拡張している例もあります。そのような例では手を下げると、腕や手が腫れて、痛みを感じることが多く、日中常に腕や手を高く上げていなければ辛い、という症状を呈することがあります。

<ハンドベイン治療を希望される方々の例>

  • ピアニスト、モデルなど人前で手を見せる機会の多い方
  • 女優、アナウンサーなどテレビ出演機会の多い方
  • 知人や親族に手のボコボコの血管を指摘される(気持ち悪がられる)という方 など

ハンドベインの原因

血管が浮き出る要因として遺伝や生活習慣が関係していると言われていますが、主な原因のひとつが加齢です。加齢によって血管の弾力がなくなると血管が広がって太くなり、さらに皮膚自体にも弾力やハリがなくなることで、手の甲や腕の血管が浮き出てくるのです。血管の弾力を維持するためには各種のビタミン・ミネラル・ポリフェノールの摂取が大切で、皮膚のコンディションを整えるためには紫外線を避け清潔を保ち保湿することが重要です。それらのことに気を付けていても、加齢とともに血管が浮き上がってくることがしばしばあります。また、手を酷使される方や痩せている方など生理的に血管が浮き上がっている場合も少なくありません。

原因1『運動習慣』

日常的に手や腕を酷使するスポーツや仕事をしている方は、日常生活を送るのに必要なボリュームよりも大量の血液循環が必要になるため、静脈が拡張しやすい傾向にあります。

原因2『痩せて皮下脂肪が少ない』

皮下脂肪が多いと皮膚と静脈の間が皮下脂肪で占められるため、静脈が皮下の脂肪内に埋め込まれるように目立たなくなります。逆に皮下脂肪が少なすぎると皮膚に隣接して静脈が走行するためより目立ちやすくなります。

原因3『皮膚の老化(菲薄化)』

加齢とともに肌の弾力を保つのに必要な真皮内のコラーゲンやエラスチンの量が減少し、皮膚の細胞の再生が減って、表皮が薄くなっていきます。このように肌の菲薄化が進むと、手や腕の肌表面の血管が太く浮き出ているように見えてきます。特に女性の場合は女性ホルモンの影響も受けて浮き上がる血管が目立ちやすくなります。女性ホルモンは真皮のコラーゲンの生成を促進し、紫外線の影響を受けにくくするといわれていますが、20~30代をピークに、齢を重ねると女性ホルモンの分泌が急激に減少し、コラーゲンの減少や新陳代謝の低下による肌の老化が進むと言われています。さらに、皮脂腺の活動も低下して、肌を柔らかく保つ天然の軟化成分である皮脂を生成する力が弱まります。その結果、肌の弾力が低下してたるみ、皮膚も薄くなっていくことで、血管の浮きあがりが目立つようになります。 

菲薄化した皮膚構造

原因4『光(紫外線)による皮膚の老化』

紫外線を長年浴び続けることで、シミ、シワ、たるみを増やし、肌の新陳代謝を遅らせます。ごれを「光老化」といい、肌に最も悪い影響を及ぼす原因となります。ほとんど紫外線に当らない腿の内側やお尻は若い人の肌も、歳をとった人の肌もそれほど変わりません。これは紫外線刺激が無ければ皮膚の老化がそれほど進まない可能性があることを示唆します。光老化は皮膚の老化を加速させますが、手や腕はもっともその影響を受けやすい部位であり、光老化により表皮が薄くなって血管が目立ちやすくなります。 

原因5『炎症による皮膚の老化』

炎症も皮膚の老化を早めてしまいます。乾燥、化学的・物理的刺激など炎症を起こす機会が他の部分に比べて多い手や腕の肌は他の部分よりもキメが粗く、ハリがなくなる傾向にあります。僅かな炎症であっても長い期間その状態が続くと皮膚の老化が進むため注意が必要です。手や腕の皮膚に刺激を与えないように注意する、タバコなど炎症を起こす習慣を止める、生活習慣能上でスキンケアに高い意識を持つことが大切です。 

原因6『血管の老化』

一般的に加齢や生活習慣により静脈はその弾力性が低下していきます。動脈だけではなく静脈も齢をかさねるにつれて血管壁が厚くなり、弾力がなくなり、太くなります。これもハンドべインを生じさせる一因です。高コレステロールや糖分の多い食事、過度な飲酒や喫煙、運動不足などの悪しき生活習慣は、健康を維持する上で非常に大切な「血管」の老化を加速させます。 

原因7『遺伝によるもの』

体質により血管が拡張しやすい方もおられます。ご親族に、ご自身と同じように血管が太く浮き出ている人がおられるのであれば、遺伝的に血管が目立ちやすい可能性があります。 

ハンドベインの治療法とそれぞれの利点・欠点

私たちは、「下肢静脈瘤」という、脚にボコボコと血管が浮き上がる病気に対して2005年から血管内レーザー治療をご用意しており、非常に高い治療効果と治療満足度を得てきました。その技術を応用することにより、ハンドべインの治療が可能であることを2006年に確認しました。以来、ハンドべインに悩む多くの方に血管内レーザー治療をご用意しております。 因みに、脱毛やシミの治療に用いるレーザーと同様に、体外から皮膚を介して血管に照射するレーザー治療もありますが、これは殆ど治療効果がありません。当初この治療法について私たちも検証したことがありますが、治療効果が殆どないことを確認しました。また、硬化療法は従来ハンドベインの治療として用いられていたようですが、治療効果が不十分なことがあるだけでなく深部静脈も硬化させるリスクがあるので、治療範囲は限られます。血管内にレーザーを挿入して血管の内側からレーザー照射をする方法(血管内レーザー治療)が最も効果的かつ安全であると評価されます。血管の周囲にヒアルロン酸を注入して血管の盛り上がりを目立たなくさせる美容治療の技術も存在しますが、これは血管が目立たなくなる効果があったとしても一時的で、手や指が腫れぼったくなるリスクがあります。

ハンドベインの様々な治療法

  • 血管内レーザー治療
  • 硬化療法(プレーン、フォーム)
  • ヒアルロン酸注入療法
  • 体外照射タイプレーザー(経皮的レーザー)

1.血管内レーザー治療 の利点・欠点

治療として最も確実で安全な治療法です。対象となる血管に細い針を用いてレーザーファイバーを挿入し、血管の内膜にレーザーを照射して血管を収縮させます。それにより拡張していた静脈が肉眼的に目立たなくさせます。完全に血管を閉鎖せずに縮退させることを目指した治療で、血行を完全に遮断させる硬化療法に比べて健康上のリスクが低いと言えます。ただし、蛇行が大きい血管や比較的細い血管へのファイバーの挿入が容易ではない場合があり、施術者の経験と技術が大きく治療成果に影響します。

血管内レーザー治療
利点 ほとんど全てのハンドべインを確実に治療できます(治療範囲に制限はあります)。
血管を完全閉塞させずに目立たなくさせることができます(術者の技術が必要です)。
欠点 施術後一時的に腫れるため、数日から1週間は包帯を巻くことになります。
局所麻酔が必要です。

2.硬化療法(プレーン、フォーム) の利点・欠点

従来から米国などで実施されていますが、大きな拡張には効果が乏しく、効果があってもむしろ血管が硬化して気になる場合があります。さらに血行を完全に遮断してしまう治療設計なので広範囲の治療に向きません。また、表在の静脈だけではなく深部静脈も閉鎖するリスクがあります。

硬化療法 (プレーン、フォーム)
利点 短時間で治療が終わります。細い血管には有効です。
欠点 ハンドべインでよく見られる比較的太い血管には対処できません。
固まった血管が、硬いしこりとして残ることがあります。
処理した血管を完全に閉塞させるため、血行を悪化させるリスクがあります。
(深部静脈の循環を損ねるリスクがあります)
治療後しばらくは、包帯やサポーターでの圧迫が必要となります。

3.ヒアルロン酸注入療法 の利点・欠点

拡張した静脈の周りの皮膚や皮下にヒアルロン酸を注入して盛り上げ血管の浮き上がりを目立たなくさせる美容治療です。これは血管を直接処理するわけではないので変化に乏しい場合があり、逆にヒアルロン酸を入れすぎると手がはれぼったくなってしまうリスクがあります。 皮膚が乾燥している方などは、少量のヒアルロン酸を手の甲全体に広げるように注入する方法を用いられれば肌の潤いが改善することが期待できます。

ヒアルロン酸注入療法
利点 脂肪の少ない痩せた手の場合、ふっくらとした見た目に改善することが期待できます。
欠点 血管を相対的に目立たなくする美容治療であり根本的な治療とはなりません。
入れすぎると手が腫れたようになってしまうリスクがあります。
ヒアルロン酸は数ヶ月で吸収されるため繰り返しの治療が必要となります。

4.体外照射タイプレーザー(経皮的レーザー) の利点・欠点

波長1064nmのロングパルスYAGレーザーや1320nmのクールタッチレーザーを用います。治療対象となる血管にレーザーを外側から直接照射し、皮膚を介して血管壁に対してレーザーを送達する方法ですが、これは網目・クモの巣静脈瘤など細かいタイプの下肢静脈瘤や顔の毛細血管拡張などには有効であるものの、血流が豊富な手や腕の拡張した静脈を縮小させて目立たなくさせる治療効果は期待できません。

体外照射タイプレーザー (経皮的レーザー)
利点 処置後に包帯を巻く必要がなく、手をすぐ水でぬらすことができます。
欠点 一般的なハンドべインには無効です(赤・紫などの毛細血管拡張には対応できます)。

当院の治療方法(レーザー治療)

私たちは、「下肢静脈瘤」という、脚にボコボコと血管が浮き上がる病気に対して2005年から血管内レーザー治療をご用意しており、非常に高い治療効果と治療満足度を得てきました。その技術を応用することにより、ハンドべインの治療が可能であることを2006年に確認しました。以来、ハンドべインに悩む多くの方に血管内レーザー治療をご用意しております。 因みに、脱毛やシミの治療に用いるレーザーと同様に、体外から皮膚を介して血管に照射するレーザー治療もありますが、これは殆ど治療効果がありません。当初この治療法について私たちも検証したことがありますが、治療効果が殆どないことを確認しました。血管内にレーザーを挿入して血管の内側からレーザー照射をする方法(血管内レーザー治療)が最も効果的です。
当院のレーザー治療では、治療対象となる拡張血管に対して針を刺入してその中に細いレーザーファイバーを挿入します。レーザーファイバーの先端からレーザーを血管内に照射すると血管内膜や中膜が萎縮して血管が縮みます。それにより血管の径が縮小して目立たなくなります。レーザー照射の際に血管周囲は局所麻酔で被覆しますので治療中に痛みはありません。治療時間は1-2時間です。

ハンドベイン施術例

治療経過例

    30代症例

    38歳 女性 両手の甲から前腕の浮き出た目立つ血管を治療
    部位 両手 手の甲~前腕
    治療方法・治療回数 血管内レーザー照射(2000mn) 1回
    使用針本数
    照射エネルギー(J)
    時間(秒)
    右:22本(875J・218秒)
    左:28本(1132J・283秒)

    治療前の写真

    ▲治療前の写真

    治療後の写真

    ▲治療後(1ヶ月経過)の写真




    40代症例

    46歳 女性 両手の甲から前腕の浮き出た目立つ血管を治療
    部位 両手 手の甲~前腕
    治療方法・治療回数 血管内レーザー照射(2000mn) 1回
    使用針本数
    照射エネルギー(J)
    時間(秒)
    右:22本(右952J・238秒)
    左:19本(左744J・186秒)

    治療前の写真

    ▲治療前の写真

    治療後の写真

    ▲治療後(1ヶ月経過)の写真




    50代症例

    54歳 女性 両手の甲から前腕の浮き出た目立つ血管を治療
    部位 両手 手の甲~前腕
    治療方法・治療回数 血管内レーザー照射(2000mn) 1回
    使用針本数
    照射エネルギー(J)
    時間(秒)
    右:23本(右838J・209秒)
    左:30本(左1063J・265秒)

    治療前の写真

    ▲治療前の写真

    治療後の写真

    ▲治療後(1ヶ月経過)の写真




    60代症例

    69歳 女性 両手の甲から前腕の浮き出た目立つ血管を治療
    部位 両手 手の甲~前腕
    治療方法・治療回数 血管内レーザー照射(2000mn) 1回
    使用針本数
    照射エネルギー(J)
    時間(秒)
    右:28本(右921J・230秒)
    左:36本(左1246J・311秒)

    治療前の写真

    ▲治療前の写真

    治療後の写真

    ▲治療後(1ヶ月経過)の写真




    70代症例

    71歳 女性 両手の甲から前腕の浮き出た目立つ血管を治療
    部位 両手 手の甲~前腕
    治療方法・治療回数 血管内レーザー照射(2000mn) 1回
    使用針本数
    照射エネルギー(J)
    時間(秒)
    右:18本(右647J・161秒)
    左:18本(左左576J 144秒)

    治療前の写真

    ▲治療前の写真

    治療後の写真

    ▲治療後(4ヶ月経過)の写真




    70代症例

    76歳 女性 両手の甲から前腕の浮き出た目立つ血管を治療
    部位 両手 手の甲~前腕
    治療方法・治療回数 血管内レーザー照射(2000mn) 1回
    右:硬化療法2か所 左:硬化療法5か所
    使用針本数
    照射エネルギー(J)
    時間(秒)
    右:16本(右765J・191秒)
    左:16本(左670J・169秒)

    治療前の写真

    ▲治療前の写真

    治療後の写真

    ▲治療後(3ヶ月経過)の写真




治療の合併症

局所麻酔の影響で治療後は手や腕がやや腫れます。1週間くらいは内出血も残ります。手や腕は制限なく使えますが、治療をした血管の周囲を触ると麻酔がかかっている鈍い感覚やしびれ、痛みを感じる状態が1-2カ月は持続することが多いです。ただし、日常生活を著しく制限されることはなく、いずれの症状も時間経過とともに消失していきます。回復を促すために、術後数日間は包帯で圧迫することをお勧めしています。

治療の流れ

初診当日に治療をすることも可能ですが、一般的にはまずカウンセリングを受けていただいております。カウンセリングの際に、手や腕の血管の状態を確認して、治療の内容や費用をご説明いたします。治療を希望される場合は、治療日をご予約いただき後日治療を実施いたします。治療前に特に生活上の注意はありません。治療は1-2時間前後で終了しますが、治療前のマーキングや治療後の包帯処置など手術前後の時間を含めて2-3時間程度の時間を要します。治療後は数日から1週間程度包帯での圧迫が必要になります。基本的な日常生活の制限はありません。

アフターケア

原則として手術後1-2か月目に治療経過を確認いたします。治療効果が乏しい血管がある場合は、部分的に硬化療法で仕上げる場合もありますが、その必要がない場合が殆どです。

費用

  • 穿刺・照射1か所あたり 33,000円(税込)
  • 一般的な穿刺部数 手甲:10~15か所  前腕:5-15か所
    患者様の血管状態で異なります。手甲から前腕で穿刺箇所が合わせて14~25か所程度が一般的です。 
    片手甲、前腕で15か所前後の施術数になる方が最も多いです。

治療費用の目安

施術対象 治療費の幅(平均的な金額)
《片手》甲のみ 30~45万円(平均35万円程度)
《両手》甲のみ 60~90万円(平均70万円程度)
《片手》前腕のみ 15~45万円(平均35万円程度)
《両手》前腕のみ 30~90万円(平均70万円程度)
《片手》甲~前腕 45~90万円(平均50万円程度)
《両手》甲~前腕 70~120万円(平均90万円程度)