がん遺伝子治療を受ける医療機関の選び方cancergenetherapy
先述したように、遺伝子治療にまつわるトラブルが絶えないのは極めて残念です。
患者さんには、遺伝子治療を受けることを検討する際に、以下のような医療機関には是非注意して欲しいと思います。
・遺伝子治療によって、あらゆるがん、あらゆる病期のがんが治せる、と説明する。
遺伝子治療が効きにくい場合も残念ながらある。医療機関側と患者さん側との間には、背景知識の違いによる誤解がしばしば生じることがある。過度の期待を煽る説明を遺伝子治療に対して行う医療機関は信頼できない。
・標準治療である手術、放射線治療、化学療法を否定している。
確かに遺伝子治療は、標準治療に比べて体への負担や副作用が少ない。しかし、遺伝子治療は公的治療としての正規の手続きを経ておらず未承認治療である。科学的証拠がそろっている標準治療の適用がある場合はそれらの治療を優先すべきだ。遺伝子治療は標準治療を補完する以上のものではない。
・遺伝子治療が確立された治療であるとして固定した治療クールを提示する。
遺伝子治療を実施する患者さんの多くは治療抵抗性の難治がんであることが多い。治療が効いたとしても、治療プランは試行錯誤の上で立案せざるを得ない。これだけの治療をすれば確実に治る、などと誤解を招くような確定的な治療クールを提示するのは不適切だ。
・治療費用が前払いで、途中で治療を中断した際に返金しないルールになっている。
遺伝子治療中に、副作用や予期せぬ出来事により治療を中断せざるを得ないことがある。特に標準治療が無効となった場合は余命が短いと宣告されていることが多い。そのような例では、遺伝子治療の効果が得られず早期に死に至ることもあるだろう。医療報酬は医療行為の対価として支払われるべきもので未遂の治療に相当する費用に関しては返金するのが当然だ。
遺伝子治療は日々進化しています。
当院で使用している遺伝子治療薬は、この10年で10回以上の改良を施しています。人類にとっての多大な貢献を期待し得る遺伝子治療が、不適切な医療行為により台無しにされるのは心より不本意なことです。
現代のがん治療の限界に苦しみ悩む患者さんのために、私たちは今後も遺伝子治療を大切に育んでいく所存です。