症例・治療事例CASE
がん遺伝子治療膵臓がん
【がん遺伝子治療】症例(14)70代男性 膵臓がん
2023.01.21
ご相談内容 | 2021年6月DM(糖尿病)で通院加療中、かかりつけ医にて腫瘍マーカー高値を指摘されたが、EGD、MRI、EUS検査でがんは診断されず。その後、インスリン導入開始。半年後くらいから腹部・背部痛があり、翌年2022年2月に地域がん診療連携拠点病院にてCT検査で、4㎝大の膵臓がんと診断される。 本人の希望で化学療法と放射線療法は行わず、他院にてネオアンチゲン治療(がん免疫療法)を行う一方で、当院の遺伝子治療も早期に希望される。 |
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治療方針 | 点滴、局所注射、腹腔内投与により遺伝子治療を実施。 |
治療経過 | 2022年2月 地域がん診療連携拠点病院のCT検査で、4㎝大の膵臓癌と診断。 本人希望により放射線治療、抗がん剤治療は実施せず。 他院でのネオアンチゲン治療(がん免疫療法)に並行して、 当院の遺伝子治療の早期介入を希望。 地域がん診療連携拠点病院は、本人の意思を尊重し疼痛管理と定期的なCT検査実施の方針。 まず1週間に1回の頻度で10~20U/回の投与、1~2ヶ月で100Uの送達をめざす。 2022年3月 遺伝子製剤の送達は 初回は点滴。 その後2回~5回は点滴と局所注射にて実施。 1回の治療で10U投与。副作用生じず。 2回めの投与後「腹部と背部の痛みが出る間隔が伸びた気がする。」 5回投与後には「腹部の違和感のみ自覚。背部の痛みは消失した。」とのこと。 2022年4月 遺伝子製剤 10Uを5回点滴・局所注射にて投与。 「心窩部痛はあり。中~下腹部の疼痛は消失している。血糖値の低下も体感している。投与の後一時的に痛みは増強する印象があるが痛みの強度は小さくなっている。不定期に痛みはあるが3月にあった激しい痛みは消失しており、ゆっくり改善している印象」 地域がん診療連携拠点病院の担当医は症状(疼痛)が伸展していないとことに驚いている。 2022年5月 遺伝子製剤 10Uを点滴・局所注射にて投与。 食欲はあり。体重の増減もない。 本人の希望で今月から遺伝子治療頻度を減らすことに。 2022年6月 遺伝子製剤 10Uを点滴・局所注射にて投与。 体重は変化なし。 ネオアンチゲン治療(がん免疫療法)で、IL6の数値が劇的に改善した。先方の医師が非常に驚いている。本人としては、遺伝子治療が効いていると考えている。 当院専門医のCT画像所見では「膵体部がんは45ミリ→50ミリと若干増大。播種結節が疑われる所見もあり、放射線治療は不適。」 2022年7月 遺伝子製剤 10Uを点滴・局所注射にて投与。 「調子はよい。痛みの性状、強度が変わってきた。以前は眠れないこともあったがそれはなくなった。痛み止めも減っている。」 腫瘍マーカーCA19-9値は上昇。 「治療翌日は問題中なかったが、起き上がると痛みがある。寝ていると痛みで目を覚ますこともありその時々で体調が変わる。」との訴えあり。 痛みの原因は腫瘍の増大であることは否定できない。 8月は遺伝子治療を実施せず。 2022年9月 遺伝子製剤 20Uを点滴・局所注射・髄腔内投与。 9/14のCT画像では、原発1.2倍に増大。腹膜播種あり。CA19-9が2622→14512に上昇。 「食事がとりにくくなっている。体重は3キロ減った。みぞおちに疼痛がある。」 遺伝子製剤の投与量を増大し対応する。 「担当医師より、腹膜播種は遺伝子治療の穿刺が原因ではないかと言われた。」とのこと。遺伝子治療を実施する前から、CTで播種を疑う変化があるので治療の際の穿刺が播種を惹起したとは考えにくい。腫瘍マーカーの変化を見る限りでは、遺伝子治療の頻度を減らしたのに応じて上昇傾向がみられるので、遺伝子治療には一定の効果があると判断。 2022年10月 遺伝子製剤 20Uを局所注射にて投与。 「調子が良くない。最初はなかったが、3か月前から触れるとふくらみがある。」 心窩部触診。心窩部のしこりが痛みの原因のよう。 2022年11月 遺伝子製剤 20Uを局所注射にて投与。 「下痢が頻繁に起きる。食欲がやや低下している。」 担当医より鎮痛剤と麻薬処方されたが、鎮痛剤が効きすぎるぐらい効くので、麻薬はなるべく使わないようにしている。 担当医からは、最初の経過予測に比して症状が安定しているので、遺伝子治療は効いているのでしょうねと見解あり。 2022年12月 遺伝子製剤 20Uを局所注射にて投与。 鎮静剤は著変なし。麻薬は使用していない。 鮮血尿、腹壁転移の疑いあり。 本日、同部位にも局所注射にて投与。 2023年1月5日 「血尿は続いたが1月に入り止まった。前後で軽い腹痛はあったが本日は問題ない。地域がん診療連携拠点病院の担当医よりCT結果の説明を受け、緩和ケアも念頭に置くべきと説明を受けた。しかし治療当初の痛みはほとんどなく、担当看護師たちは不思議がっているほど。現在は腹壁部の転移が問題と思う。腹壁への治療頻度を少しづつ増やしたい。」とのこと。 そもそも病勢に対して単位時間当たりの投与量が少ない印象だったので、2週間に1回の治療、1回20Uで対応。次回は前回と同様の局所注射治療、その後は動脈カテーテルを併用する予定。 当院専門医のCT画像所見では、「膵臓原発巣は増大し、尾側膵管拡張が以前より目立つ。同時に貯留嚢胞が形成されている。腹膜播種も以前より目立つ。腹壁内腫瘍も9月より増大傾向であり播種に矛盾しない。」 2023年1月7日 遺伝子製剤 20Uを局所注射にて投与。 血尿が続いている。排尿時の灼熱感を伴う。食欲の低下傾向。下痢傾向あり。内服薬を調整して対応している。 担当医からは、末期の症状で急変もありえると説明を受けて落ちこんでいる。 2023年1月16日 遺伝子製剤 20Uを局所注射にて投与。 動脈カテーテルによる投与を追加。治療直後、この1週間に気になっていた疼痛はほぼ消失。 |
治療状況 | 2022年2月地域がん診療連携拠点病院にてCT、TM検査、4㎝大の膵臓癌と診断。本人希望により放射線治療、抗がん剤治療はせず、他院にてネオアンチゲン治療(がん免疫療法)、当院の遺伝子治療で対応。地域がん診療連携拠点病院は、本人の意思を尊重し疼痛管理を継続。遺伝子治療を集中的に行った当初2か月は、症状(疼痛)が伸展せず、腫瘍マーカー上昇も抑えられていたが、その後治療頻度を軽減したところ、原発、腹膜播種が増大したため、遺伝子製剤を増量して治療を継続中。 |
治療期間 | 2022年3月~2023年1月(1年10か月継続中) |
費用 | 治療総額:計19回の治療で治療費 計 11,550,000円。(税込) ※遺伝子製剤の投与量単位(U:unit)について 遺伝子治療製剤の投与ボリュームを表現する際に ・Titer: 遺伝子を運ぶウイルスベクター粒子の数または感染価 ・ベクターコピー数 などが用いられます。 投与量単位(U)は、当院で便宜上設定したもので公的な基準ではありません。 具体的には、当院で設定している1Uは1.0×10^8(10の8乗)=1億ベクターコピーに相当します。 |
治療のリスク | 大規模な二重盲検試験が実施されておらず未承認治療です。 注射部の内出血、軽度疼痛、一過性の発熱(37-38℃)など、軽微な副作用がある場合があります。 |