症例・治療事例CASE
がん遺伝子治療
【がん遺伝子治療】症例(8)50代女性 卵巣がん(リンパ節転)
2022.10.08
ご相談内容 | 大学病院で卵巣がんの手術後4年目に腫瘍マーカー上昇。PET/CT検査も異常なし、その時点で化学療法を行ってもQOLを犠牲にするだけで予後の改善が得られないと考え、遺伝子治療の早期介入を希望。 |
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治療方針 | 化学療法を補完する立場で、遺伝子治療を実施する。 |
治療経過 | ・2019年4月 大学病院で卵巣がんステージ3の手術・化学療法後4年目に婦人科系の腫瘍マーカーが上昇。 ・2019年2月 PET/CT検査も異常なしで同定できず、この時点で化学療法を行ってもQOLを犠牲にするだけで 予後の改善が得られないという判断で、紹介にて来院。遺伝子検査(リキッドバイオプシー)を実施。 ・2019年6月 CTで右鎖骨上 縦隔リンパ節の石灰化があり、前回と著変。所見と比べると変化があり、 CA125も確実に漸増しているので再発が否定できない状態。 引き続き大学病院で月1回TM確認を行いつつ、遺伝子治療の早期介入を希望。 ・2019年7月 効果判定をしながら治療を実施。1回の治療に用いる遺伝子製剤の量は2U。 投与中の気分不快等なく、治療直後から体調が良く、夏バテもなく快調とのこと。 ・2019年8月 TMではCA125が横ばいないしは低下。 ・2019年10月 遺伝子製剤 2Uを投与。 ・2019年11月 遺伝子製剤 3Uを投与。 ・2019年12月 PET/CT 右鎖骨上窩 左上縦隔にリンパ節転移あり。 4Uを点滴・局所注射にて投与。 「化学療法は、副作用の点で躊躇している。化学療法の合間に遺伝子治療を継続して受けたい。」とのこと。 ・2020年1月 大学病院にて化学療法を開始。並行して当院で遺伝子治療を行う。5Uを点滴・局所注射にて投与。 ・2020年2月~6月 5Uを月1回のペースで5回、点滴・局所注射にて投与。 6月にはTC療法の6クール目終了、分子標的薬(リムバーザ)へ変更。 「化学療法では、吐き気・頭痛・めまいなどの副作用があり生活の質が著しく低下した。 投薬しても再再発の可能性が高くなるのであれば、減薬(または中止)して生活の質を優先し、 副作用の心配のない遺伝子治療1本にできないか。」とのご希望もあったが TMは改善顕著であり、化学療法は状況によって増減しながら継続することにした。 分子標的薬(リムバーザ)も倦怠感、手足のしびれなどの副作用あり。 ・2020年7月~2022年9月 2021年12月CTでは、リンパ節縮小傾向を維持。 5Uを9回、点滴・局所注射にて投与。継続中。 |
治療状況 | 化学療法を遺伝子治療で補完。遺伝子治療開始2年1か月で、腫瘍マーカーは正常化し病変はほぼ消失。 大学病院での化学療法と並行して、遺伝子治療を継続中。 |
治療期間 | 2019年7月~2022年9月(約3年2か月)継続中。 |
費用 | 治療総額:計19回の治療で治療費 計 3,993,000円。(税込) ※遺伝子製剤の投与量単位(U:unit)について 遺伝子治療製剤の投与ボリュームを表現する際に ・Titer: 遺伝子を運ぶウイルスベクター粒子の数または感染価 ・ベクターコピー数 などが用いられます。 投与量単位(U)は、当院で便宜上設定したもので公的な基準ではありません。 具体的には、当院で設定している1Uは1.0×10^8(10の8乗)=1億ベクターコピーに相当します。 |
治療のリスク | 大規模な二重盲検試験が実施されておらず未承認治療です。 注射部の内出血、軽度疼痛、一過性の発熱(37-38℃)など、軽微な副作用が生じる場合があります。 |